第32話 成功の願い(3)
文字数 1,895文字
日本には、神社がコンビニの数以上あるらしい。真帆の話によると、人がいっぱい訪れるパワースポットはよく無いらしい。人の欲望で渦巻き、神聖な場所がすっかり穢れているという。
霊などは全く見えない璃子だが、人の欲望が良いものでは無い事は理解できる。実際、占いの客から欲深い相談を聞くと、エネルギーを吸い取られて疲れてしまう。
真帆から教えてもらったあやかし神社は、山地にあり、地元民でもあんまり人が来ないらしい。
璃子は山登りでもするような重装備をし、あやかし神社に向かった。それぐらい行くのに骨が折れる場所にあった。山を越え、谷を越えようやく湖の側にあるあやかし神社にたどり着いた時は、達成感で胸が踊る。
人気のない神社だったが、美しい森に囲まれて、綺麗な鳥の鳴き声も聞こえてきた。側にある湖は、太陽の光が反射し、キラキラと輝いていた。
赤い鳥居をくぐると、すっかり清らかで神聖な気持ちになっていた。風は心地よく、璃子の頬を撫でていた。ザワザワとした木々のざわめきも、聞いてるだけで浄化されそうだ。他に誰も人がいないが、気分がいい。近所の下ネタ神社は、やっぱり人の欲望が渦巻いているようにも見えるが、ここはまさに秘境だ。気分は解放さて、清らかになっていく感覚を覚えていた。
さっそく手水舎で手を洗い、水を飲み。
「何この水、美味しい」
手水舎の水は透き通り、かなり美味しい。たぶん湧水だろうが、自然の恵みを感じた。美味しい水を飲んでいると、自分も自然の一部だと感じてきた。自分が感じている欲望も、自然な事では無いかとも思う。引き寄せの法則の本でも、欲望は悪い事ではなく、自然な感情だと書いてあった。
確かに占いの客は、欲望深くてウンザリするが、ナチュラルな事なのかもしれない。そもそも人間の欲望の抑え方なんて義務教育で教わった記憶もない。
「欲望は悪いものでは無いのかも。さっそくお参りに行かなきゃ」
璃子はハンカチで口元を拭うと、本堂の方に向かう。
神主や巫女の姿を探すが、他に本当に人がいないようだ。おみくじや絵馬も飾ってなく、参拝客もいないようだ。その割には、本堂も綺麗にされ、廃神社といった空気はない。むしろ、清らかな空気を感じてしまう。
賽銭箱には、一万円札を入れた。真帆からは、それぐらい入れると良いと言われていた。神様には与える人がより与えらるという。惜しみなく賽銭箱に一万円札を入れ、しっかりと願った。
「占い師として成功したいです」
すっかり気分が良くなり、帰りには神社の近くにある湖もよってみた。
湖は、太陽の光の反射し、少し虹色っぽく見えた。大きな湖ではなかったが、見ているだけで浄化されていく気分になる。
「あれ、あれはマリア像?」
湖の奥の森の近くに聖母マリアの像があるのに気づいた。慈悲深い優しい表情のマリアだった。なぜ神社の側にマリア像があるか謎だが、もしかしたら隠れキリシタンの神社かもしれない。意外とマリア像や大天使ミカエルの像も置いてある神社がある事も知っていた。日本人の宗教に関する懐の深さに、璃子はくすっと笑いたい気分だ。海外にいるクリスチャンは、神社にあるマリア像の違和感を持つかもしれないが、璃子はそうは思わなかった。むしろマッチしてる気がする。
『もしもし、璃子?』
マリア像の近くへ行き、笑顔で見ていたら、どこからか声が聞こえた。優しい清らかな声だった。聞き間違いかと思ったが、確かに耳に響いてきた。
『私は聖母マリア』
「えー? 本当?」
『ええ。私と契約しませんか。あなたが成功するよう、導きます』
マリア像は全く変わらず動かなかったが、この声は確実に聞こえていた。霊感のない璃子だったが、今はすんなりと信じられる。気づくと、マリア像は光輝き、眩しいぐらいだった。
『私は人を愛しています。璃子の事も助けたいのよ』
その清らかで優しい声を否定する事はできず、璃子は彼女と契約する事になった。
マリアの声に従い、占いをするとなぜか全部当たった。交通事故にあうなどとマイナスな事を言っても、客に嫌がられる事はなく、むしろ有難いと言われるようになった。
こうしてマリアの声を聞きながら、順調に成功していった。
不思議な事に、怪我や病気の治療もできてしまった。マリアに頼むと、癒しの力もくれた。
「聖女さま、ありがとう。目の病気が治ったよ」
小さな子供にも感謝されるようになり、璃子の認証欲求は満たされていく。
ついに土地を買い、大きなビルも建てた。メディアからも引っ張りだこになり、世間からは占い師ではなく「聖女さま」と呼ばれるようになった。
めでたし、めでたし?
霊などは全く見えない璃子だが、人の欲望が良いものでは無い事は理解できる。実際、占いの客から欲深い相談を聞くと、エネルギーを吸い取られて疲れてしまう。
真帆から教えてもらったあやかし神社は、山地にあり、地元民でもあんまり人が来ないらしい。
璃子は山登りでもするような重装備をし、あやかし神社に向かった。それぐらい行くのに骨が折れる場所にあった。山を越え、谷を越えようやく湖の側にあるあやかし神社にたどり着いた時は、達成感で胸が踊る。
人気のない神社だったが、美しい森に囲まれて、綺麗な鳥の鳴き声も聞こえてきた。側にある湖は、太陽の光が反射し、キラキラと輝いていた。
赤い鳥居をくぐると、すっかり清らかで神聖な気持ちになっていた。風は心地よく、璃子の頬を撫でていた。ザワザワとした木々のざわめきも、聞いてるだけで浄化されそうだ。他に誰も人がいないが、気分がいい。近所の下ネタ神社は、やっぱり人の欲望が渦巻いているようにも見えるが、ここはまさに秘境だ。気分は解放さて、清らかになっていく感覚を覚えていた。
さっそく手水舎で手を洗い、水を飲み。
「何この水、美味しい」
手水舎の水は透き通り、かなり美味しい。たぶん湧水だろうが、自然の恵みを感じた。美味しい水を飲んでいると、自分も自然の一部だと感じてきた。自分が感じている欲望も、自然な事では無いかとも思う。引き寄せの法則の本でも、欲望は悪い事ではなく、自然な感情だと書いてあった。
確かに占いの客は、欲望深くてウンザリするが、ナチュラルな事なのかもしれない。そもそも人間の欲望の抑え方なんて義務教育で教わった記憶もない。
「欲望は悪いものでは無いのかも。さっそくお参りに行かなきゃ」
璃子はハンカチで口元を拭うと、本堂の方に向かう。
神主や巫女の姿を探すが、他に本当に人がいないようだ。おみくじや絵馬も飾ってなく、参拝客もいないようだ。その割には、本堂も綺麗にされ、廃神社といった空気はない。むしろ、清らかな空気を感じてしまう。
賽銭箱には、一万円札を入れた。真帆からは、それぐらい入れると良いと言われていた。神様には与える人がより与えらるという。惜しみなく賽銭箱に一万円札を入れ、しっかりと願った。
「占い師として成功したいです」
すっかり気分が良くなり、帰りには神社の近くにある湖もよってみた。
湖は、太陽の光の反射し、少し虹色っぽく見えた。大きな湖ではなかったが、見ているだけで浄化されていく気分になる。
「あれ、あれはマリア像?」
湖の奥の森の近くに聖母マリアの像があるのに気づいた。慈悲深い優しい表情のマリアだった。なぜ神社の側にマリア像があるか謎だが、もしかしたら隠れキリシタンの神社かもしれない。意外とマリア像や大天使ミカエルの像も置いてある神社がある事も知っていた。日本人の宗教に関する懐の深さに、璃子はくすっと笑いたい気分だ。海外にいるクリスチャンは、神社にあるマリア像の違和感を持つかもしれないが、璃子はそうは思わなかった。むしろマッチしてる気がする。
『もしもし、璃子?』
マリア像の近くへ行き、笑顔で見ていたら、どこからか声が聞こえた。優しい清らかな声だった。聞き間違いかと思ったが、確かに耳に響いてきた。
『私は聖母マリア』
「えー? 本当?」
『ええ。私と契約しませんか。あなたが成功するよう、導きます』
マリア像は全く変わらず動かなかったが、この声は確実に聞こえていた。霊感のない璃子だったが、今はすんなりと信じられる。気づくと、マリア像は光輝き、眩しいぐらいだった。
『私は人を愛しています。璃子の事も助けたいのよ』
その清らかで優しい声を否定する事はできず、璃子は彼女と契約する事になった。
マリアの声に従い、占いをするとなぜか全部当たった。交通事故にあうなどとマイナスな事を言っても、客に嫌がられる事はなく、むしろ有難いと言われるようになった。
こうしてマリアの声を聞きながら、順調に成功していった。
不思議な事に、怪我や病気の治療もできてしまった。マリアに頼むと、癒しの力もくれた。
「聖女さま、ありがとう。目の病気が治ったよ」
小さな子供にも感謝されるようになり、璃子の認証欲求は満たされていく。
ついに土地を買い、大きなビルも建てた。メディアからも引っ張りだこになり、世間からは占い師ではなく「聖女さま」と呼ばれるようになった。
めでたし、めでたし?
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