第38話 許しの願い(1)
文字数 1,123文字
黒木碧子は、遺書を書いて封筒に入れた。遺書には、クラスメイトの及川祐香里と石岡美嘉にいじめられた事を詳細に書いた。
悔しい。本心では死にたく無い。
しかし、碧子は正しい判断はできなくなっていた。昨日、祐香里と美嘉には、罰ゲームとしてコオロギ入りのクッキーを食べさせられた。
教師に訴えても「昆虫食は流行ってるじゃない。希望者だけだけど、給食でコオロギパウダー入りのパンを食べたでしょ? これはいじめではないですよ」と言われてしまった。碧子の中で、何かがプツンと切れてしまった。
世の中は腐っている。
多くの陰謀論者が「学校の給食にコオロギなんて出すな」とクレームつけたらしいが、アンチ陰謀論者が「給食は強制では無く希望者だけですから」と論破していた。一見、アンチ陰謀論者の方が正しい事を言っているようだが、「給食で昆虫食を出す事で、いじめや罰ゲームに発展しないか?」と危惧していた陰謀論者の方が正しかったわけである。
碧子の声など誰も聞いてくれない。誰に訴えても「自己責任。いじめられる方が悪い」と言われてしまう。
もう、どうしようもない。絶望しかない。
首を吊った瞬間、幻を見た。
綺麗な羽根を背負った天使がいた。金髪碧眼のイケメンで「私は大天使ミカエル」と名乗っていた。
確かファンタジー小説やゲームなどで、ミカエルの存在は知っていた。どういう天使なのかは、よくわからないが。
「ミカエル?」
『うん。そーだよ』
ミカエルは無邪気に笑っていた。美しい笑顔で、碧子はうっとりとした視線を向けてしまう。
『いじめで辛いね。碧子の辛い記憶を、僕にくれないかい?』
「は? 記憶なんてあげる事が出来るの?』
『そーだよ。碧子が可哀想になったから、助けてあげる』
「いじめられている私は助けてくれなかったよね?」
そう碧子が言うと、ミカエルは傷ついた表情を見せ、うるうるとした瞳を見せた。綺麗な瞳で、見せられてしまうと、碧子は何も言えなくなってしまった。
『それに、記憶がなくなれば碧子も楽になれるよ。楽になりたいんでしょ?』
そう言われてしまうと、ぐうの音も出なかった。
「わかったよ」
同意した瞬間、ミカエルは豹変した。美しい天使の姿から、頭から鬼のようなツノが生え、顔も真っ赤になっていた。白い衣は剥がれ落ち、真っ黒な身体を見せた。
そして、緑子は身体を丸呑みにされた。鬼のような存在に全てを食べられてしまったようだった。
後悔したが、もう遅かった。全身に強い痛みが走り、碧子の自我も全て消えていく。
『馬鹿だな。人間って。さて、これから碧子のフリでもして、人間を脅かしにいくか!』
どこからか鬼の声がする。
いや、これは鬼ではなく悪魔の声だったのかもしれない。
悔しい。本心では死にたく無い。
しかし、碧子は正しい判断はできなくなっていた。昨日、祐香里と美嘉には、罰ゲームとしてコオロギ入りのクッキーを食べさせられた。
教師に訴えても「昆虫食は流行ってるじゃない。希望者だけだけど、給食でコオロギパウダー入りのパンを食べたでしょ? これはいじめではないですよ」と言われてしまった。碧子の中で、何かがプツンと切れてしまった。
世の中は腐っている。
多くの陰謀論者が「学校の給食にコオロギなんて出すな」とクレームつけたらしいが、アンチ陰謀論者が「給食は強制では無く希望者だけですから」と論破していた。一見、アンチ陰謀論者の方が正しい事を言っているようだが、「給食で昆虫食を出す事で、いじめや罰ゲームに発展しないか?」と危惧していた陰謀論者の方が正しかったわけである。
碧子の声など誰も聞いてくれない。誰に訴えても「自己責任。いじめられる方が悪い」と言われてしまう。
もう、どうしようもない。絶望しかない。
首を吊った瞬間、幻を見た。
綺麗な羽根を背負った天使がいた。金髪碧眼のイケメンで「私は大天使ミカエル」と名乗っていた。
確かファンタジー小説やゲームなどで、ミカエルの存在は知っていた。どういう天使なのかは、よくわからないが。
「ミカエル?」
『うん。そーだよ』
ミカエルは無邪気に笑っていた。美しい笑顔で、碧子はうっとりとした視線を向けてしまう。
『いじめで辛いね。碧子の辛い記憶を、僕にくれないかい?』
「は? 記憶なんてあげる事が出来るの?』
『そーだよ。碧子が可哀想になったから、助けてあげる』
「いじめられている私は助けてくれなかったよね?」
そう碧子が言うと、ミカエルは傷ついた表情を見せ、うるうるとした瞳を見せた。綺麗な瞳で、見せられてしまうと、碧子は何も言えなくなってしまった。
『それに、記憶がなくなれば碧子も楽になれるよ。楽になりたいんでしょ?』
そう言われてしまうと、ぐうの音も出なかった。
「わかったよ」
同意した瞬間、ミカエルは豹変した。美しい天使の姿から、頭から鬼のようなツノが生え、顔も真っ赤になっていた。白い衣は剥がれ落ち、真っ黒な身体を見せた。
そして、緑子は身体を丸呑みにされた。鬼のような存在に全てを食べられてしまったようだった。
後悔したが、もう遅かった。全身に強い痛みが走り、碧子の自我も全て消えていく。
『馬鹿だな。人間って。さて、これから碧子のフリでもして、人間を脅かしにいくか!』
どこからか鬼の声がする。
いや、これは鬼ではなく悪魔の声だったのかもしれない。
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