第14話 縁切りの願い(1)
文字数 1,454文字
村田桐花は、有名なインフルエンサーだった。SNSで動画や画像を配信し、美容系インフルエンサーとしてフォロワー数を稼いでいた。
「桐花のビューティ☆ワールドにお越しいただきましてありがとうございます♪」
今日の夜は、生配信の日だった。生配信といってもお手軽に配信できる。声だけなので、バッチリとオシャレをする必要もない。それでも広告収入や企業案件などで、一般的なOLより稼いでいた。大卒後、一度派遣社員になったが、こうして簡単に稼げてしまうと、バカバカしくなってきた。画像も加工をしまくり、ネット上にいるのは架空の村田桐花なわけだが、金が稼げれば何でも良いというのが本音だった。
社会は男女平等というが、それは建前という事はよく分かっていた。学歴がいくらあっても男は得だがブスは損。営業職もアナウンサーも容姿で選んでいる。結局、美人が男と平等になっただけだ。相変わらず多くの日本人女性は低賃金である。逆に綺麗事を言い、どんな人にも努力すればチャンスがあるという世の中の違和感を持つ桐花だった。
桐花の容姿は普通レベルだが、声は全く加工しなくても可愛いと言われる事が多かった。人気女性声優に似た声らしい。お陰でこうやって稼げるわけだが、つくづく世の中は不平等にできている。声や容姿がブスがいくら頑張っても、努力しても無駄な事は多々あるのに「夢は叶う」なんて言うのは、かえって残酷ではないか。
「それでは、視聴者さんからの質問です。えー、東京都のAちゃんからの質問です。桐花ちゃんの初恋の人は誰ですか?」
ふと、頭の中で牛田智樹の顔が浮かんだが、すぐに追い出した。智樹は確かに初恋相手だったが、桐花にとって黒歴史だった。二度と思い出したくない。
「初恋の人は、中学の時の先輩です。サッカーが上手で、とても優しい人でした。バレンタインでもチョコを作って渡したり。えー、懐かしいな!」
それは全部嘘だった。
クラスで陰キャだった桐花は、優しい先輩などからは「キモい」としか言われてこなかった。それでも中学女子として性の好奇心はある。同じくクラスの陰キャの智樹に声をかけ、初体験をすました。
智樹も好奇心があり、お互いにウィンウィンだった。
それから智樹と半年ぐらいは付き合ったが、所詮身体の関係から始まった付き合いだった。智樹の臭い部屋で身体を重ねる事しか出来ず、全く楽しくない。好奇心もお互い満たされてしまい、受験勉強も始まったので、自然消滅した。桐花もメイクを覚え、陽キャに格上げされ、智樹と気が合わなくなったという経緯もある。
何であんな陰キャと付き合っていたんだろう。好奇心に駆られたとはいえ、黒歴史だった。
「ねぇー、初恋なんてキュンキュンするよね!」
嘘ばっかりの話をすればするほど、智樹の事を思い出してしまう。あのニキビだらけの湿っぽい顔を思い出すだけで吐きそうだ。
配信が終わったら、彼氏の三島敬哉に電話した。IT企業に勤めるエリートサラリーマンだ。イケメンでとても優しい。配信を通して敬哉と知り合い、1ヶ月ぐらい前から付き合っていた。
「桐ちゃん、配信聞いたよ。初恋の話ってマジ?」
「えー、盛ってるだけだよ」
それどころか嘘ばっかりだが。
「桐花の初恋は敬哉だから」
「はは、可愛いね。実は急に出張が入って3ヶ月ぐらいアメリカに行くことになったんだ」
「え? 本当?」
「ごめんよ。寂しい思いさせて」
「えー、寂しい」
「可愛いやつだ」
しばらく敬哉と甘い時間を過ごしたが、翌日から不幸が始まっている事など知らなかった。
「桐花のビューティ☆ワールドにお越しいただきましてありがとうございます♪」
今日の夜は、生配信の日だった。生配信といってもお手軽に配信できる。声だけなので、バッチリとオシャレをする必要もない。それでも広告収入や企業案件などで、一般的なOLより稼いでいた。大卒後、一度派遣社員になったが、こうして簡単に稼げてしまうと、バカバカしくなってきた。画像も加工をしまくり、ネット上にいるのは架空の村田桐花なわけだが、金が稼げれば何でも良いというのが本音だった。
社会は男女平等というが、それは建前という事はよく分かっていた。学歴がいくらあっても男は得だがブスは損。営業職もアナウンサーも容姿で選んでいる。結局、美人が男と平等になっただけだ。相変わらず多くの日本人女性は低賃金である。逆に綺麗事を言い、どんな人にも努力すればチャンスがあるという世の中の違和感を持つ桐花だった。
桐花の容姿は普通レベルだが、声は全く加工しなくても可愛いと言われる事が多かった。人気女性声優に似た声らしい。お陰でこうやって稼げるわけだが、つくづく世の中は不平等にできている。声や容姿がブスがいくら頑張っても、努力しても無駄な事は多々あるのに「夢は叶う」なんて言うのは、かえって残酷ではないか。
「それでは、視聴者さんからの質問です。えー、東京都のAちゃんからの質問です。桐花ちゃんの初恋の人は誰ですか?」
ふと、頭の中で牛田智樹の顔が浮かんだが、すぐに追い出した。智樹は確かに初恋相手だったが、桐花にとって黒歴史だった。二度と思い出したくない。
「初恋の人は、中学の時の先輩です。サッカーが上手で、とても優しい人でした。バレンタインでもチョコを作って渡したり。えー、懐かしいな!」
それは全部嘘だった。
クラスで陰キャだった桐花は、優しい先輩などからは「キモい」としか言われてこなかった。それでも中学女子として性の好奇心はある。同じくクラスの陰キャの智樹に声をかけ、初体験をすました。
智樹も好奇心があり、お互いにウィンウィンだった。
それから智樹と半年ぐらいは付き合ったが、所詮身体の関係から始まった付き合いだった。智樹の臭い部屋で身体を重ねる事しか出来ず、全く楽しくない。好奇心もお互い満たされてしまい、受験勉強も始まったので、自然消滅した。桐花もメイクを覚え、陽キャに格上げされ、智樹と気が合わなくなったという経緯もある。
何であんな陰キャと付き合っていたんだろう。好奇心に駆られたとはいえ、黒歴史だった。
「ねぇー、初恋なんてキュンキュンするよね!」
嘘ばっかりの話をすればするほど、智樹の事を思い出してしまう。あのニキビだらけの湿っぽい顔を思い出すだけで吐きそうだ。
配信が終わったら、彼氏の三島敬哉に電話した。IT企業に勤めるエリートサラリーマンだ。イケメンでとても優しい。配信を通して敬哉と知り合い、1ヶ月ぐらい前から付き合っていた。
「桐ちゃん、配信聞いたよ。初恋の話ってマジ?」
「えー、盛ってるだけだよ」
それどころか嘘ばっかりだが。
「桐花の初恋は敬哉だから」
「はは、可愛いね。実は急に出張が入って3ヶ月ぐらいアメリカに行くことになったんだ」
「え? 本当?」
「ごめんよ。寂しい思いさせて」
「えー、寂しい」
「可愛いやつだ」
しばらく敬哉と甘い時間を過ごしたが、翌日から不幸が始まっている事など知らなかった。
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