第17話 縁切りの願い(4)完
文字数 1,894文字
それから一年たった。
智樹の事もあやかし神社もすっかり忘れた頃だった。
配信の仕事も順調で、モデルや声優とのコラボ活動なども楽しかった。敬哉とも幸せで、最近プロポーズもされてしまった。まさにこの世の春。怖いぐらい幸せだった。
そんな折、家のポストに差し出し人不明の封筒が入っていた。智樹の事を思い出し、一瞬怖くなったが、どうせチラシか何かだろう適当に開いてみた。
「な、請求書? 何これ?」
クレジットカード会社からのものとは全く違う請求書だった。
「あなたの罪は、これだけあります。先祖からの偶像崇拝と不倫の罪、婚前交渉、弱者への無慈悲、智樹への呪いのような縁切りの願い……。もう借金がいっぱいで首が回りませんね。あなたの将来や健康などで帳尻を合わせたいですが、難しいです。家族や恋人にも借金を請求させていただきます。この世の神より。ってどういう事?」
イタズラかと思った時、電話がかかってきた。敬哉と共通の知人だった。
「大変! 敬哉が事故にあったの! トラックに轢かれて……」
その後は、あまり記憶はない。身体がぐちゃぐちゃになった敬哉と死体安置室で対面していた。
「何で? 何でよ! 敬哉が何したっていうのよ!」
桐花の絶叫が響いていた。
それを空中から見ていたこの世の神、いや悪魔は腹を抱えて大笑いしていた。
聖書で悪魔はこの世の神とも表現される。悪魔はこの世の金や名誉を好きにできる権限もある。本来は人間がこの世を支配する権限を神から貰っていたが、堕落してしまったので、悪魔が支配する世になっていた。日本の神社にいる神っぽい何かも、聖書で表現される悪魔だった。聖書でも暴露されているが、悪魔は天使のフリをするのは十八番。何でも願いを叶えてくれる優しそうな存在を演じるのは、一番得意といって良い。最終的には地獄に行く事も決定しているが、人間を誘惑して一人でも多く地獄に道連れにしたいかった。その為にはちょっとした願いを叶えたり、奇跡だって見せてやるのだ。
「いやぁ、神社で願いをする時は気をつけてw 俺が代償を貰っていくからな。桐花、現実逃避したいだろうけど、トラックに轢かれたって異世界転生なんてしないよーん♪ 来世でまた出会えません! ツインテイルもソウルメイトも輪廻転生もないですからぁ〜。残念!」
桐花の泣き顔を見てるとサイコーだ。今日の飯は美味しいに違いない。今回は自分の完勝だ。悪魔は、桐花から健康、財産、仕事、家族、将来を吸い取っていった。
「一度やっちまった男と縁切りなんてできねーよ。セックスすると魂の連結ができるんですわー。セックスした相手とは身も心も一体になるって聖書でもネタバレしてるんだけど、クリスチャンでも婚前交渉やっていてウケる。一体になるといっても、祝福は貰えず、婚前交渉の場合は呪いと不幸だけが一体になるだけだけどな! あ、これはポルノやアイドルをおかずに一人でやっても呪われるからね? 心の中でちょっとあの人良いなって思うのもアウトだからな? 非モテ男女も宗教人も偉そうにすんなよ。この件は神に助けを求めるしか無い訳だねー」
悪魔は大笑いしながら、敬哉の魂も拾い、地獄へ案内していく。敬哉はヤリチンで婚前交渉をしまくっていた。その魂は罪でドロドロに穢れ、桐花が何もしなくても死ぬ予定だったのだが。
『俺、何かしました? 死んでも異世界転生は出来ないんですね? あなた、死神ですか?』
敬哉は自分が何をしたのか全くわかっていなかった。本当の神なら同情するところだが、悪魔は容赦しない。
「いっぱい女と気持ちいい事したよねー? もうあんたの魂は、クソ女との呪いと一体になってヤバいぜ? 結婚しか認めない神も潔癖でプライド高すぎだけど、そういう決まりだから仕方がない。馬鹿だな、人間って」
魂の状態に変わった敬哉は、生前の肉体と違っていた。皮膚は爛れ、ぼこぼこに殴られ、出血が止まらなかった。お腹や腰は鎖でぐるぐる巻きにされ、身動きも取れていなかった。イケメンエリートサラリーマンの姿は何処にもいない。
『どうすれば良いんでしょうか?』
敬哉は悪魔に助けを求めたが、その声を聞く事はなかった。唯一の解決方法は知っているが、人間なんかに教えてあげる必要は無い。借金を全額肩代わりしてくれる存在なんて全力で隠したい。八百万の神がある日本は悪魔にとって都合が良い。国ごとに神が違うという発想に騙されていればいい。木を隠すなら森の中ってやつさ。これが本当の神隠し。
「ようこそ、俺らの実家・地獄へ。貴方のご主人様の家に戻りましょうね♪」
楽しそうな悪魔の声だけが響いていた。
智樹の事もあやかし神社もすっかり忘れた頃だった。
配信の仕事も順調で、モデルや声優とのコラボ活動なども楽しかった。敬哉とも幸せで、最近プロポーズもされてしまった。まさにこの世の春。怖いぐらい幸せだった。
そんな折、家のポストに差し出し人不明の封筒が入っていた。智樹の事を思い出し、一瞬怖くなったが、どうせチラシか何かだろう適当に開いてみた。
「な、請求書? 何これ?」
クレジットカード会社からのものとは全く違う請求書だった。
「あなたの罪は、これだけあります。先祖からの偶像崇拝と不倫の罪、婚前交渉、弱者への無慈悲、智樹への呪いのような縁切りの願い……。もう借金がいっぱいで首が回りませんね。あなたの将来や健康などで帳尻を合わせたいですが、難しいです。家族や恋人にも借金を請求させていただきます。この世の神より。ってどういう事?」
イタズラかと思った時、電話がかかってきた。敬哉と共通の知人だった。
「大変! 敬哉が事故にあったの! トラックに轢かれて……」
その後は、あまり記憶はない。身体がぐちゃぐちゃになった敬哉と死体安置室で対面していた。
「何で? 何でよ! 敬哉が何したっていうのよ!」
桐花の絶叫が響いていた。
それを空中から見ていたこの世の神、いや悪魔は腹を抱えて大笑いしていた。
聖書で悪魔はこの世の神とも表現される。悪魔はこの世の金や名誉を好きにできる権限もある。本来は人間がこの世を支配する権限を神から貰っていたが、堕落してしまったので、悪魔が支配する世になっていた。日本の神社にいる神っぽい何かも、聖書で表現される悪魔だった。聖書でも暴露されているが、悪魔は天使のフリをするのは十八番。何でも願いを叶えてくれる優しそうな存在を演じるのは、一番得意といって良い。最終的には地獄に行く事も決定しているが、人間を誘惑して一人でも多く地獄に道連れにしたいかった。その為にはちょっとした願いを叶えたり、奇跡だって見せてやるのだ。
「いやぁ、神社で願いをする時は気をつけてw 俺が代償を貰っていくからな。桐花、現実逃避したいだろうけど、トラックに轢かれたって異世界転生なんてしないよーん♪ 来世でまた出会えません! ツインテイルもソウルメイトも輪廻転生もないですからぁ〜。残念!」
桐花の泣き顔を見てるとサイコーだ。今日の飯は美味しいに違いない。今回は自分の完勝だ。悪魔は、桐花から健康、財産、仕事、家族、将来を吸い取っていった。
「一度やっちまった男と縁切りなんてできねーよ。セックスすると魂の連結ができるんですわー。セックスした相手とは身も心も一体になるって聖書でもネタバレしてるんだけど、クリスチャンでも婚前交渉やっていてウケる。一体になるといっても、祝福は貰えず、婚前交渉の場合は呪いと不幸だけが一体になるだけだけどな! あ、これはポルノやアイドルをおかずに一人でやっても呪われるからね? 心の中でちょっとあの人良いなって思うのもアウトだからな? 非モテ男女も宗教人も偉そうにすんなよ。この件は神に助けを求めるしか無い訳だねー」
悪魔は大笑いしながら、敬哉の魂も拾い、地獄へ案内していく。敬哉はヤリチンで婚前交渉をしまくっていた。その魂は罪でドロドロに穢れ、桐花が何もしなくても死ぬ予定だったのだが。
『俺、何かしました? 死んでも異世界転生は出来ないんですね? あなた、死神ですか?』
敬哉は自分が何をしたのか全くわかっていなかった。本当の神なら同情するところだが、悪魔は容赦しない。
「いっぱい女と気持ちいい事したよねー? もうあんたの魂は、クソ女との呪いと一体になってヤバいぜ? 結婚しか認めない神も潔癖でプライド高すぎだけど、そういう決まりだから仕方がない。馬鹿だな、人間って」
魂の状態に変わった敬哉は、生前の肉体と違っていた。皮膚は爛れ、ぼこぼこに殴られ、出血が止まらなかった。お腹や腰は鎖でぐるぐる巻きにされ、身動きも取れていなかった。イケメンエリートサラリーマンの姿は何処にもいない。
『どうすれば良いんでしょうか?』
敬哉は悪魔に助けを求めたが、その声を聞く事はなかった。唯一の解決方法は知っているが、人間なんかに教えてあげる必要は無い。借金を全額肩代わりしてくれる存在なんて全力で隠したい。八百万の神がある日本は悪魔にとって都合が良い。国ごとに神が違うという発想に騙されていればいい。木を隠すなら森の中ってやつさ。これが本当の神隠し。
「ようこそ、俺らの実家・地獄へ。貴方のご主人様の家に戻りましょうね♪」
楽しそうな悪魔の声だけが響いていた。
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