第26話 厄年(1)

文字数 1,067文字

 児嶋絹子は、最近不幸が続いていた。絹子は33歳。そういう年頃なのかも知れないが、不運続きだった。

 まず、勤めていた美容サプリメントの会社が潰れた。元々強引な営業で評判は良くなかったが、美容成分に健康被害があるものが含まれていると、ネットで炎上し、あっという間会社がなくなった。

 同時に夫の両親の世話や子どもの世話に追われて、てんてこ舞いだった。転職活動もうまくいかず、ファミレスでバイトをやっていたが、配膳ロボットを導入する事になり、そこもクビになってしまった。やはり、コロナの影響で世の中は不況のようだった。もっとも、子供が小さい頃は専業主婦をしていたので、切り詰めて生活すれば問題は無いのだが、子供には中学受験をさせたいし、金が欲しいと思っていた。

「それ、厄年じゃない?」

 ママ友一人・加藤真帆とお茶したとき、彼女はそういった。真帆はネットで占い師をやっているらしい。なかなかカンもよく、悩み事がありと、彼女によく相談していた。

「厄年? それって何?」
「陰陽道で悪い事が起きやすい時期なのよね。神社のお祓いにでもいったら?」

 と言っても、自分はそんなスピリチュアルな人間ではないし、お祓いに行くのは抵抗がある。

「絹子のホロスコープ では、グランドクロスもあるし、元々不運に遭いやすいのよ」

 真帆はニヤリとわらった。自分よりいくつか歳下だが、やはり占いをやっているだけあろ、独特な雰囲気はある。手首には、パワーストーンがいっぱいついていた。

「お祓いって効果あるの?」
「あるよ。私も19歳の時厄年だったけど、病気も軽くすんだ」

 それって結果論では無いのかと思ったが、気になってくる。

「でも神社行くのは、抵抗があるんだよね。なんとなく」

 絹子は子供のころの七五三の帰り、激しい嘔吐に襲われた事があった。その後も何回か神社にいった事があるが、必ず体調不良になっていた。

「それは、相性の悪い神社に行ったのかもよ」
「そう?」
「神社の神様が怒ったのかも。ちゃんと作法通りに参拝した?」

 そう言われると自信はない。真帆に詳しい参拝の仕方を教えて貰ったが、どれも守っていなかった。

「そんな参拝の仕方をしてるから、厄年で困ってるんだよ」
「そうなんだ」

 だんだんとと怖くなってきた。

「この神社がオススメだよ」
「どこの神社?」

 真帆からは、パワースポットとして有名な神社を教えて貰った。

「あやかし神社? 変な名前の神社ね」
「縁切りの効果もすごいらしい。厄との縁が切れるかもよ。一度行ってみたら?」

 真帆から神社の住所を教えてもらい、行ってみる事にした。
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登場人物紹介

悪魔

あやかし神社の主。人間の記憶を食い幽霊のフリ、天使、動物やイケメンのフリをして人間を騙している。ヤクザのように願いの代償を請求する。聖書の神様に敵対。

悪霊

悪魔の手先。人間の心に棲みつく実行部隊。あやかし神社では眷属のフリをしている。

聖書

悪魔と人間が結んだ契約を破棄する鍵…?

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