第11話 宝くじの願い(2)
文字数 1,424文字
「はー、疲れた」
主婦友達とお茶すると、全くリラックスできない。ケーキや紅茶は美味しかったはずなのに、全く味が思い出せない。
どっと疲れながら、家に向かって帰り道を歩いていると、住宅街の中に小さな神社があるのに気づいた。
鳥居と本殿しかないコンパクトにまとめられている神社だったが、今までにこんな神社はあっただろうか。
鳥居に近づくと、「あやかし神社」という看板があった。
あやかしというと妖怪?
どこかファンタジーな雰囲気を感じる神社だった。こんな住宅街にあるのに、異世界にでも繋がっていそう。人がいないし、鳥居の派手な赤色が、現実感を薄めていた。
「宝くじ当てるためには、運をよくしないとね」
芳子は、鳥居をくぐった。入るとすぐ横に絵馬がいっぱい飾られていて、たくさんの願いが書き連ねてあった。中にはお金が入ってきたとか、宝くじに当たりましたと御礼も書かれているではないか。思わずワクワクしてくる。
芳子は本堂まで足を進めると、小銭をなげ鈴をならした。しめ縄は、太くてちょっと蛇みたいに見えるが、期待で胸が膨らむ。
「宝くじを当てたいです。真子さんや由紀恵さんをギャフンと言わせたい。ハワイ旅行に行って車も家も新しくしたいです!」
誰もいない事を良い事に願い事は口に出していた。
すると目の前が、突然強い光が満たされた。今は昼間のはずだが、太陽や月の光とは思えないような明るい光だった。
「あ。な、何?」
芳子の目の前には、モフモフの子牛がいた。しかも白黒ではなく、黄金に光っていた。
「可愛い!」
おかしな動物だったが、目尻はさがり可愛らしい。大きさもミニサイズで、芳子の手にすっぽり抱き抱えても大丈夫そうだ。なにより毛並みがモフモフしていて、触っていると笑顔になってしまう。
突然現れた現実味のない子牛だったが、あまりにも可愛くて芳子の自制心が溶けていた。冷静さも蒸発していた。
「そうだ、写真撮ろう!」
スマートフィンを取り出そうとした時、子牛のそばに一枚の紙が落ちているのに気づいた。
「何これ? 契約書?」
そこには、契約条件が書かれていた。
「私と契約するなら願いを叶えてあげましょう。ただし、この神社の神様と健康、財産、魂も全て一体になります。願いを叶えるたびに、あなたが持っているものから何か払っていただきます……。これが霊的な契約というものです。契約とは結婚と同等です。神が創ったシステムだから仕方ありません。って、な、何これ……」
契約書はシンプルな活字が並んでいたが、読めば読むほど怖い。
しかも可愛かった子牛だが、だんだんと黒い塊のように見えてきた。
「ねえ、あなた。これどういう事?」
子牛は何も言わなかったが、頭に直接響くような声が聞こえた。
『宝くじ当てて、由紀恵や真子にマウントとりたいんだろう? 車や家もピカピカにできるよ? 海外旅行だって行ける。どう? 私と契約しないか?』
もしかして神社にいる神が、話しかけているの?
怖い。
だけど、どうにか声を振り絞る。
「やめて! うるさい!」
『何でも願いを叶えてあげるよ」
恐怖で膝が抜けそうだった。
「やめて、怖いから!」
あまりにも怖さで、可愛い子牛も悪魔のように見えてきてしまった。
芳子は神社から一目散に逃げ、家に閉じこもった。
少し落ち着いてから、あやかし神社の事を調べたが、何の情報も出てこない。神社があった場所は空き地だとある。
これは夢?
そう思うのが一番辻褄があった。
主婦友達とお茶すると、全くリラックスできない。ケーキや紅茶は美味しかったはずなのに、全く味が思い出せない。
どっと疲れながら、家に向かって帰り道を歩いていると、住宅街の中に小さな神社があるのに気づいた。
鳥居と本殿しかないコンパクトにまとめられている神社だったが、今までにこんな神社はあっただろうか。
鳥居に近づくと、「あやかし神社」という看板があった。
あやかしというと妖怪?
どこかファンタジーな雰囲気を感じる神社だった。こんな住宅街にあるのに、異世界にでも繋がっていそう。人がいないし、鳥居の派手な赤色が、現実感を薄めていた。
「宝くじ当てるためには、運をよくしないとね」
芳子は、鳥居をくぐった。入るとすぐ横に絵馬がいっぱい飾られていて、たくさんの願いが書き連ねてあった。中にはお金が入ってきたとか、宝くじに当たりましたと御礼も書かれているではないか。思わずワクワクしてくる。
芳子は本堂まで足を進めると、小銭をなげ鈴をならした。しめ縄は、太くてちょっと蛇みたいに見えるが、期待で胸が膨らむ。
「宝くじを当てたいです。真子さんや由紀恵さんをギャフンと言わせたい。ハワイ旅行に行って車も家も新しくしたいです!」
誰もいない事を良い事に願い事は口に出していた。
すると目の前が、突然強い光が満たされた。今は昼間のはずだが、太陽や月の光とは思えないような明るい光だった。
「あ。な、何?」
芳子の目の前には、モフモフの子牛がいた。しかも白黒ではなく、黄金に光っていた。
「可愛い!」
おかしな動物だったが、目尻はさがり可愛らしい。大きさもミニサイズで、芳子の手にすっぽり抱き抱えても大丈夫そうだ。なにより毛並みがモフモフしていて、触っていると笑顔になってしまう。
突然現れた現実味のない子牛だったが、あまりにも可愛くて芳子の自制心が溶けていた。冷静さも蒸発していた。
「そうだ、写真撮ろう!」
スマートフィンを取り出そうとした時、子牛のそばに一枚の紙が落ちているのに気づいた。
「何これ? 契約書?」
そこには、契約条件が書かれていた。
「私と契約するなら願いを叶えてあげましょう。ただし、この神社の神様と健康、財産、魂も全て一体になります。願いを叶えるたびに、あなたが持っているものから何か払っていただきます……。これが霊的な契約というものです。契約とは結婚と同等です。神が創ったシステムだから仕方ありません。って、な、何これ……」
契約書はシンプルな活字が並んでいたが、読めば読むほど怖い。
しかも可愛かった子牛だが、だんだんと黒い塊のように見えてきた。
「ねえ、あなた。これどういう事?」
子牛は何も言わなかったが、頭に直接響くような声が聞こえた。
『宝くじ当てて、由紀恵や真子にマウントとりたいんだろう? 車や家もピカピカにできるよ? 海外旅行だって行ける。どう? 私と契約しないか?』
もしかして神社にいる神が、話しかけているの?
怖い。
だけど、どうにか声を振り絞る。
「やめて! うるさい!」
『何でも願いを叶えてあげるよ」
恐怖で膝が抜けそうだった。
「やめて、怖いから!」
あまりにも怖さで、可愛い子牛も悪魔のように見えてきてしまった。
芳子は神社から一目散に逃げ、家に閉じこもった。
少し落ち着いてから、あやかし神社の事を調べたが、何の情報も出てこない。神社があった場所は空き地だとある。
これは夢?
そう思うのが一番辻褄があった。
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