第13話 宝くじの願い(4)完
文字数 1,859文字
その後、芳子が買った宝くじは当選してしまった。
ただし、高額当選ではなく50000円だけだったが。
あの神社での夢を思い出すと、気持ち悪くなってしまった芳子は、換金した50000円は、駅にいるホームレスに丸ごとあげてしまった。
確かのボロボロの服装で汚いホームレスだったが、自分も生まれる時代が悪ければ似たような立場になっていたかもしれない。自分が生きていられるのは、運がいいだけだ。
ホームレスにお金をあげる事は本当に正しい事しかわからない。本当は何か福祉支援に繋げたり、未来に続く助けをした方がいいのかも知れない。また、安易にお金をあげる事でホームレスのプライドを折る可能性もある。
誰かに優しくする事は、つくづく難しいと思ったが、今はあのお金が助けになるよう祈るばかりだ。
この事をきっかけに芳子は、ボランティアにも興味を持った。近所にキリスト教会がホームレスの弁当を支援しているというので、時間がある時は手伝う事になった。
「って事でホームレスにお金あげた事があるんですけど、よかったんですかね?」
弁当を作りながら、教会の女性牧師に尋ねてみた。牧師とは自分と同じぐらいの歳ですぐ打ち解けた。
「わからないけど、時々天使やイエス様もホームレス姿で人間を見ているっていう噂も聞くよ」
「え? 本当ですか?」
「うん。だから、弱い人に会うといつも神様だと思ってる。というか、神様って弱い人ほど大切にしてるんだよね。それに宝くじって当たった人は不幸になってるんだって。悪魔が与えたお金なのかもね。誰かにあげてよかったんじゃない? 簡単に手に入れたお金は簡単に去るよ。スピリチュアルな人は一瞬金儲けは出来ても出て行くお金も多いって言ってたよ。お金があるのは幸せとは言い切れないんだね」
そんな事を聞くと、やっぱりあの50000円は、ホームレスにあげて良かったのかもしれないと、芳子はホッとしてしまった。
そんな芳子の姿を空中から見ていた金の子牛は、ブチギレしていた。
「ふざけんな! 何、ホームレスに金あげてるんだよ!」
金の子牛の姿から、だんだんと悪魔の姿に変わっていく。
「契約は有効じゃないが、宝くじを当てた事はこっちの恩恵だからな! さて、何か芳子から健康か家族を……」
そう言って芳子の体から健康を奪おうとした時だった。汚いホームレスがやってきてボコボコにされていまった。
ホームレスは、人間ではない。人間のフリをしていた天使だった。格好はボロボロだが、背中には白く輝く羽根があった。
『芳子に手を出したら許さない。イエス様の御名前で命令だ』
天使にそう言われてしまった悪魔は、この戦いは負けだと悟った。神の名前には絶対的権威があり、これを出されると悪魔でも従うしかない。悪魔も所詮、神には逆らえない雑魚だった。
悪魔は負傷しながらもあやかし神社に逃げ帰った。
「くそ! 今度こそは絶対人間を騙してやる!」
悪魔の声が、あやかし神社に響いていた。
さて、今回の勝負は負けてしまったが、次は負けない。
どうせ人間なんて欲には勝てないのだ。その欲をちょっと刺激してやればいい。欲はエゴだけではなく、心の傷やトラウマからも生まれる。傷やトラウマで弱ってる人間は、俺らにとって赤子の手を捻るようにイージーだ。対人関係に傷ついた人間をポルノ依存や同性愛者になるよう誘惑するのも俺らの十八番。教会の同性愛者を差別しないで認めようとする活動なんて、的外れもいいところ。本当は障害ではなくて全部俺らが系引いてるんだけどね〜。この問題の犯人・俺らね。
自分は誘惑しただけ。人間の心の中にある悪いものをちょっと刺激してやっただけ。「何でも悪魔、サタンのせいにすんな」って裁くクリスチャンも、俺らにとっては結構都合がいいんだよね? 悪い方をどうして選択してしまう罪も巧妙に隠せるしね? そもそも霊的な事をまるっとスルーする知識系エリート系宗教人って本当に俺らにとって都合がいい。
俺らにとって一番嫌な人間は、罪を犯さないように一生懸命「宗教」やってるものではなく、罪を犯しながらも神に頼り、隣人に憐れみと赦しの心を持ったヤツだ。
いっておくけど、俺らの攻撃は人間の思考、判断力だけで防御出来るもんでもないから、ね?
そんな人間の力だけで清く正しく神になろうとするのを「宗教」というのだよ。まあ、俺らが一生懸命隠してるわけだけど、人間には神でしか救えない領域のものがあるんだわ。
悪魔は、ニヤニヤと笑いながら次のターゲットを騙す準備をはじめた。
ただし、高額当選ではなく50000円だけだったが。
あの神社での夢を思い出すと、気持ち悪くなってしまった芳子は、換金した50000円は、駅にいるホームレスに丸ごとあげてしまった。
確かのボロボロの服装で汚いホームレスだったが、自分も生まれる時代が悪ければ似たような立場になっていたかもしれない。自分が生きていられるのは、運がいいだけだ。
ホームレスにお金をあげる事は本当に正しい事しかわからない。本当は何か福祉支援に繋げたり、未来に続く助けをした方がいいのかも知れない。また、安易にお金をあげる事でホームレスのプライドを折る可能性もある。
誰かに優しくする事は、つくづく難しいと思ったが、今はあのお金が助けになるよう祈るばかりだ。
この事をきっかけに芳子は、ボランティアにも興味を持った。近所にキリスト教会がホームレスの弁当を支援しているというので、時間がある時は手伝う事になった。
「って事でホームレスにお金あげた事があるんですけど、よかったんですかね?」
弁当を作りながら、教会の女性牧師に尋ねてみた。牧師とは自分と同じぐらいの歳ですぐ打ち解けた。
「わからないけど、時々天使やイエス様もホームレス姿で人間を見ているっていう噂も聞くよ」
「え? 本当ですか?」
「うん。だから、弱い人に会うといつも神様だと思ってる。というか、神様って弱い人ほど大切にしてるんだよね。それに宝くじって当たった人は不幸になってるんだって。悪魔が与えたお金なのかもね。誰かにあげてよかったんじゃない? 簡単に手に入れたお金は簡単に去るよ。スピリチュアルな人は一瞬金儲けは出来ても出て行くお金も多いって言ってたよ。お金があるのは幸せとは言い切れないんだね」
そんな事を聞くと、やっぱりあの50000円は、ホームレスにあげて良かったのかもしれないと、芳子はホッとしてしまった。
そんな芳子の姿を空中から見ていた金の子牛は、ブチギレしていた。
「ふざけんな! 何、ホームレスに金あげてるんだよ!」
金の子牛の姿から、だんだんと悪魔の姿に変わっていく。
「契約は有効じゃないが、宝くじを当てた事はこっちの恩恵だからな! さて、何か芳子から健康か家族を……」
そう言って芳子の体から健康を奪おうとした時だった。汚いホームレスがやってきてボコボコにされていまった。
ホームレスは、人間ではない。人間のフリをしていた天使だった。格好はボロボロだが、背中には白く輝く羽根があった。
『芳子に手を出したら許さない。イエス様の御名前で命令だ』
天使にそう言われてしまった悪魔は、この戦いは負けだと悟った。神の名前には絶対的権威があり、これを出されると悪魔でも従うしかない。悪魔も所詮、神には逆らえない雑魚だった。
悪魔は負傷しながらもあやかし神社に逃げ帰った。
「くそ! 今度こそは絶対人間を騙してやる!」
悪魔の声が、あやかし神社に響いていた。
さて、今回の勝負は負けてしまったが、次は負けない。
どうせ人間なんて欲には勝てないのだ。その欲をちょっと刺激してやればいい。欲はエゴだけではなく、心の傷やトラウマからも生まれる。傷やトラウマで弱ってる人間は、俺らにとって赤子の手を捻るようにイージーだ。対人関係に傷ついた人間をポルノ依存や同性愛者になるよう誘惑するのも俺らの十八番。教会の同性愛者を差別しないで認めようとする活動なんて、的外れもいいところ。本当は障害ではなくて全部俺らが系引いてるんだけどね〜。この問題の犯人・俺らね。
自分は誘惑しただけ。人間の心の中にある悪いものをちょっと刺激してやっただけ。「何でも悪魔、サタンのせいにすんな」って裁くクリスチャンも、俺らにとっては結構都合がいいんだよね? 悪い方をどうして選択してしまう罪も巧妙に隠せるしね? そもそも霊的な事をまるっとスルーする知識系エリート系宗教人って本当に俺らにとって都合がいい。
俺らにとって一番嫌な人間は、罪を犯さないように一生懸命「宗教」やってるものではなく、罪を犯しながらも神に頼り、隣人に憐れみと赦しの心を持ったヤツだ。
いっておくけど、俺らの攻撃は人間の思考、判断力だけで防御出来るもんでもないから、ね?
そんな人間の力だけで清く正しく神になろうとするのを「宗教」というのだよ。まあ、俺らが一生懸命隠してるわけだけど、人間には神でしか救えない領域のものがあるんだわ。
悪魔は、ニヤニヤと笑いながら次のターゲットを騙す準備をはじめた。
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