第9話 健康の願い(4)完

文字数 717文字

 大学生になり、都内のカフェで忙しそうにバイトしている愛美の姿があった。

 いかにも健康そうで、身体が弱かった時の面影はない。

 空中からそんな愛美の姿を見ていた妖狐は、激怒していた。

 妖狐の姿は消え、だんだんと顔が真っ赤な悪魔の姿に変わっていた。

 本来なら、愛美と契約した後は、子宮の病気にして子供を産めなくするつもりだった。悪魔の目標の一つは子供を女から取り上げる事だ。だから若い女をターゲットにして言葉巧みに契約させる予定だったのに!

「くそ! クリスチャンのやつ、覚えてろよ! ふざけんな! 邪魔しやがって絶対許さない! リベラル牧師みたいに神は愛です、創世記はファンタジーで進化論が正しいですって適当に言っておけよ! なに祈ったら行動しろとか言ってるんだよ!」

 今回は悪魔の負けだ。久美の時はイージーにできたのに、今回はクリスチャンが邪魔してきやがった。

 教会での祈りが神に通じ、愛美を救えたようだった。結局のところ悪魔も神の許可無しでは自由に動く事はできなかった。今回邪魔したクリスチャンに報復を試みたが、祈りと福音でバリアができてきた為、手出しができない。それも悔しかった。

「あぁ、腹立つ! 腹立つ!」

 悪魔は真っ赤な顔をしながら、地団駄を踏む。

「覚えてろよ。今度こそ馬鹿な人間を騙して地獄に堕としてやる!」

 そう宣言すると、悪魔はあやかし神社に戻った。

 さて、次こそは負けないよ?

 次はどんなあやかしに化けて人間を騙そうかね?

 どんな願いでも叶えてあげる。ただし、代償はいただきます。願った本人だけでなく家族や友達、恋人の命も奪うのもいい、ね?

 悪魔の声があやかし神社の中に響いた。まるで地獄から聞こえてくる音のようだった。
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登場人物紹介

悪魔

あやかし神社の主。人間の記憶を食い幽霊のフリ、天使、動物やイケメンのフリをして人間を騙している。ヤクザのように願いの代償を請求する。聖書の神様に敵対。

悪霊

悪魔の手先。人間の心に棲みつく実行部隊。あやかし神社では眷属のフリをしている。

聖書

悪魔と人間が結んだ契約を破棄する鍵…?

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