恋と、寂しさと

文字数 485文字

あれだけうまく行ったのに身を引いたんだから、このぐらいはやってもらわないと。
赤点男が何言ってんの。
 自分の役割がとっくに終わってるのをいいことに大口叩くと、すかさず舞歌が口を挟む。だけど、もう昔の僕じゃない。
残念でした、無事クリスマスが過ごせそうです。
一緒に過ごす相手もいないくせに。
 そう来られると、いろんな意味で返す言葉がない。だけど、この夏みたいに胸が締め付けられることはなかった。
はいはい、リア充様。仰せの通りでございます。
 おどけてみせると、都筑が冷ややかに口を挟んでくる。
じゃあ、いっそ舞歌が……。

ちょっとどういう意味それ、幸威がそれ言う?
 いきなり怒り出した舞歌を、部員たちに混じって僕もなだめた。そのうち、都筑もペコペコ謝りだす。
悪い! 舞歌、冗談、冗談だってば!
知らない!
 みんなドっと笑ったけど、僕はそんな気にはなれなかった。
(……何か、寂しいな)
 不思議に思ったところで、気が付いた。
涼美先輩……。
 呼んでみたのは、ここにいる部員のどこかに混じっていて当然だと思ったからだ。
 でも、返事がない。あちこち見渡しても、どこにもいない。
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登場人物紹介

三坂朔(みさか さく)

 ヤル気なしの高校1年生。

 帰宅部だったのに、演劇部員の地区大会代役として舞台に引っ張り出されて、汗みどろのシゴキに耐える日々を送っている。

 サボリ癖が強い上にムッツリスケベといいところなしだが、苦境にある者を見ると、放ってはおけない。

 幼馴染への恋には最近気づいたが、間に合わなかった。

徳永舞歌(とくなが まいか)

 劇作に夢中の高1女子。 

 役者修行に加えて戯曲執筆もこなす、やる気満々の才女。

 そのせいで朔の気持ちには気付かず(というか、もともと眼中にない)、勉強に恋にと高校生活を満喫している。

 普段は無邪気な天然少女だが、稽古の間は悪鬼羅刹と化す。

 

 

風間涼美(かざま すずみ)

 才色兼備の高3女子。

 蠱惑的な肢体を持ちながら、部活でも学校でも目立たないのは、(文字通り)次元の違う世界で生きているからである。

 即興の4行詩を吟ずることで、人間の肉体を乗っ取ろうとする異界の魔物を祓うことができる。

 実はお茶目で、年下の男性をからかうのが大好きだったりする。

シャドウ

 文字通りの「影」だが、熱い心と深い洞察力を秘めている。

 ふだんは学生服を着て、風間涼美と行動を共にしている。

 異界の魔物と接触すると、涼美の詠唱する詩の持つパワーを実体化して闘う。

都筑幸威(つづき ゆきたけ)

頭良し、ルックスよし、人望アリの完璧高2男子。

演劇部でも役者として、大会上演作品の中心となっている。

現在、徳永舞歌との交際も順調。


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