幕が上がる!

文字数 498文字

本番開始10分前!
はい! 
 令嬢の衣装を着けた舞歌が、舞台袖に下がる。その一方でシャドウは、板付き……上演が始まったときの立ち位置についた。
そうはさせるか!

 そのときにはもう、僕はシャドウの目の前……というか、本来の立ち位置にいた。

 

……?

 シャドウは僕を相手にもしない。お互い、もう完全に別次元の存在になっているのだろう。

 返して……もらうからな。

 僕は次元の違う世界にいるのをいいことに、袖幕の影からステージの上で猛ダッシュをかけたのだ。本当はやっちゃいけないことなんだけど、シャドウより先に立ち位置を取らないことには、僕の居場所を取り戻せない。

 

開演5分前!
見ているがいい。この「お前」に、お前より遥かにマシな人生を与えてやろう。
え……見えてないん……だよな。

 言い返せなかった。シャドウなら、やるかもしれない。

 だが、そのとき、舞台袖から呼ぶ声がした。

朔くん!
 涼美先輩が手を振ってくれていた。まるで、夕べのうちに僕たちの間で何かあったみたいに。
緞帳飛ばします!
 確かにあったにはあったけど、そういうんじゃない。でも、やっぱり恋人同士になったみたいだった。
……集中!
 そして、幕が上がる。
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登場人物紹介

三坂朔(みさか さく)

 ヤル気なしの高校1年生。

 帰宅部だったのに、演劇部員の地区大会代役として舞台に引っ張り出されて、汗みどろのシゴキに耐える日々を送っている。

 サボリ癖が強い上にムッツリスケベといいところなしだが、苦境にある者を見ると、放ってはおけない。

 幼馴染への恋には最近気づいたが、間に合わなかった。

徳永舞歌(とくなが まいか)

 劇作に夢中の高1女子。 

 役者修行に加えて戯曲執筆もこなす、やる気満々の才女。

 そのせいで朔の気持ちには気付かず(というか、もともと眼中にない)、勉強に恋にと高校生活を満喫している。

 普段は無邪気な天然少女だが、稽古の間は悪鬼羅刹と化す。

 

 

風間涼美(かざま すずみ)

 才色兼備の高3女子。

 蠱惑的な肢体を持ちながら、部活でも学校でも目立たないのは、(文字通り)次元の違う世界で生きているからである。

 即興の4行詩を吟ずることで、人間の肉体を乗っ取ろうとする異界の魔物を祓うことができる。

 実はお茶目で、年下の男性をからかうのが大好きだったりする。

シャドウ

 文字通りの「影」だが、熱い心と深い洞察力を秘めている。

 ふだんは学生服を着て、風間涼美と行動を共にしている。

 異界の魔物と接触すると、涼美の詠唱する詩の持つパワーを実体化して闘う。

都筑幸威(つづき ゆきたけ)

頭良し、ルックスよし、人望アリの完璧高2男子。

演劇部でも役者として、大会上演作品の中心となっている。

現在、徳永舞歌との交際も順調。


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