余計な一言でオウンゴール決める

文字数 585文字

すげ……。
どう? センパイ方?
 傍目から見れば、まるで僕が1日で都築に追いついたように見えただろう。舞歌などは、自分の人選は正しかったとばかりに鼻高々だった。
んじゃ……今日はこの辺でいいですか?
いいけど……ちょっと待ってよ。
 その日の帰り道、舞歌は何だかんだと話しかけながらバス停までついてきた。僕は僕で、何だか自信がついてきたせいか、大きなことを言うようになっていた。
何でも遠慮なく言ってよ。
 シャドウさえついていれば、何でもできるような気がしていた。でも、そんな話になると、舞歌は急に慎重になった。
でも、代役なんだし。
代役だって責任はある。
 珍しく、僕は人のために働きたいという気になっていた。それは、舞歌に認められて有頂天になっていたせいかもしれない。ところが、返ってきたのはシビアな答えだった。
都筑君と同じことは無理。
できるよ!
……。
都筑……さんの代わり、ぐらい。
 僕はちょっとムキになっていた。舞歌はちょっと困っていたようだったが、意を決したように聞き返した。
……本当?
 それは、僕の知っている舞歌とは違う声だった。低く、強い響きを持つ声だった。それにはちょっと言葉に詰まったけど、勢いに任せて言い切るしかなかった。
言ってよ、何でも。
 舞歌も、すっぱりと言い切った。
相当レベル高いよ、あたしたちの要求。
任せて。
 きっかけを掴んだら、そんなのもう、怖くなかった。
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登場人物紹介

三坂朔(みさか さく)

 ヤル気なしの高校1年生。

 帰宅部だったのに、演劇部員の地区大会代役として舞台に引っ張り出されて、汗みどろのシゴキに耐える日々を送っている。

 サボリ癖が強い上にムッツリスケベといいところなしだが、苦境にある者を見ると、放ってはおけない。

 幼馴染への恋には最近気づいたが、間に合わなかった。

徳永舞歌(とくなが まいか)

 劇作に夢中の高1女子。 

 役者修行に加えて戯曲執筆もこなす、やる気満々の才女。

 そのせいで朔の気持ちには気付かず(というか、もともと眼中にない)、勉強に恋にと高校生活を満喫している。

 普段は無邪気な天然少女だが、稽古の間は悪鬼羅刹と化す。

 

 

風間涼美(かざま すずみ)

 才色兼備の高3女子。

 蠱惑的な肢体を持ちながら、部活でも学校でも目立たないのは、(文字通り)次元の違う世界で生きているからである。

 即興の4行詩を吟ずることで、人間の肉体を乗っ取ろうとする異界の魔物を祓うことができる。

 実はお茶目で、年下の男性をからかうのが大好きだったりする。

シャドウ

 文字通りの「影」だが、熱い心と深い洞察力を秘めている。

 ふだんは学生服を着て、風間涼美と行動を共にしている。

 異界の魔物と接触すると、涼美の詠唱する詩の持つパワーを実体化して闘う。

都筑幸威(つづき ゆきたけ)

頭良し、ルックスよし、人望アリの完璧高2男子。

演劇部でも役者として、大会上演作品の中心となっている。

現在、徳永舞歌との交際も順調。


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