僕の変身

文字数 434文字

気づかないか? 俺だよ。
……。
 僕は思い出せる限り、最初に聞いたシャドウの言葉を真似した。最初、涼美先輩はきょとんとしたが、豊かな胸を腕で支えて笑い出した。
気が付かなかった。
俺を何だと思ってる……むぐ。
 精一杯カッコよく笑ってみせた。わざとらしくないかと思ったとき、息が一瞬だけ詰まった。座ったままのところへ涼美先輩がしがみついてきたので、胸に顔が埋められたのだ。
私の……シャドウ。
 耳元に、熱い息がかかる。
(あ……やっぱりそういう関係だったんだ)
 ここは慎重に、恋人役をやる必要がある。
頼りにしろよ。
 僕は心臓がバクバクいうのを我慢して、先輩の方を掴んでゆっくりと押しのける。たちまち、脳天にゲンコツが来た。
いい気になんな……私を放っておいたくせに。
あいつをフォローしろって言ったの、お前だろ……よく戦ったな。
 涼美先輩を抱き寄せる。柔らかくって、いい匂いがした。
(……ごめん、舞歌)
 月の光が、濃い青色に変わる。この間見た、不思議な光の群れがあちこちに漂い始めた。
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登場人物紹介

三坂朔(みさか さく)

 ヤル気なしの高校1年生。

 帰宅部だったのに、演劇部員の地区大会代役として舞台に引っ張り出されて、汗みどろのシゴキに耐える日々を送っている。

 サボリ癖が強い上にムッツリスケベといいところなしだが、苦境にある者を見ると、放ってはおけない。

 幼馴染への恋には最近気づいたが、間に合わなかった。

徳永舞歌(とくなが まいか)

 劇作に夢中の高1女子。 

 役者修行に加えて戯曲執筆もこなす、やる気満々の才女。

 そのせいで朔の気持ちには気付かず(というか、もともと眼中にない)、勉強に恋にと高校生活を満喫している。

 普段は無邪気な天然少女だが、稽古の間は悪鬼羅刹と化す。

 

 

風間涼美(かざま すずみ)

 才色兼備の高3女子。

 蠱惑的な肢体を持ちながら、部活でも学校でも目立たないのは、(文字通り)次元の違う世界で生きているからである。

 即興の4行詩を吟ずることで、人間の肉体を乗っ取ろうとする異界の魔物を祓うことができる。

 実はお茶目で、年下の男性をからかうのが大好きだったりする。

シャドウ

 文字通りの「影」だが、熱い心と深い洞察力を秘めている。

 ふだんは学生服を着て、風間涼美と行動を共にしている。

 異界の魔物と接触すると、涼美の詠唱する詩の持つパワーを実体化して闘う。

都筑幸威(つづき ゆきたけ)

頭良し、ルックスよし、人望アリの完璧高2男子。

演劇部でも役者として、大会上演作品の中心となっている。

現在、徳永舞歌との交際も順調。


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