涼美先輩の「自己紹介」

文字数 448文字

ええと、その……。 
 答えられないでいると、その人は長い黒髪をかき上げて、静かに微笑した。
あなたの先輩なんだけどな、この3日間ぐらいは。
 そうすると、この人は演劇部の2年生か3年生ということになる。でも、そんなに人数はいないはずなのに、どうしても思い出せない。
(……いわゆる幽霊部員ってやつだろうか?)
 先輩に見とれていたせいもあったけど、心当たりがないので、やはり返事できなかった。小さくため息ひとつついて、ブレザー姿の女子生徒が黒髪をなびかせて立ち上がる。
覚えておいてほしいな、3年の風間涼美って。
 先輩の頭上を、何かキラキラしたものが群れになって飛んでいく。
(……蛍なんか、この辺には出ないはずだ)
 まだぼんやりしていた僕に呆れたんだろう、暗い影になった風間先輩はつぶやいた。
ずっとあなたのそばにいたんだから。
(全然気が付かなかった)
頼むね、私の最後の大会。
 言われるまでもないけど、心当たりのない人にそう言われても実感がない。頷くことしかできない僕に、先輩は困ったように頭を掻いて告げた。
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登場人物紹介

三坂朔(みさか さく)

 ヤル気なしの高校1年生。

 帰宅部だったのに、演劇部員の地区大会代役として舞台に引っ張り出されて、汗みどろのシゴキに耐える日々を送っている。

 サボリ癖が強い上にムッツリスケベといいところなしだが、苦境にある者を見ると、放ってはおけない。

 幼馴染への恋には最近気づいたが、間に合わなかった。

徳永舞歌(とくなが まいか)

 劇作に夢中の高1女子。 

 役者修行に加えて戯曲執筆もこなす、やる気満々の才女。

 そのせいで朔の気持ちには気付かず(というか、もともと眼中にない)、勉強に恋にと高校生活を満喫している。

 普段は無邪気な天然少女だが、稽古の間は悪鬼羅刹と化す。

 

 

風間涼美(かざま すずみ)

 才色兼備の高3女子。

 蠱惑的な肢体を持ちながら、部活でも学校でも目立たないのは、(文字通り)次元の違う世界で生きているからである。

 即興の4行詩を吟ずることで、人間の肉体を乗っ取ろうとする異界の魔物を祓うことができる。

 実はお茶目で、年下の男性をからかうのが大好きだったりする。

シャドウ

 文字通りの「影」だが、熱い心と深い洞察力を秘めている。

 ふだんは学生服を着て、風間涼美と行動を共にしている。

 異界の魔物と接触すると、涼美の詠唱する詩の持つパワーを実体化して闘う。

都筑幸威(つづき ゆきたけ)

頭良し、ルックスよし、人望アリの完璧高2男子。

演劇部でも役者として、大会上演作品の中心となっている。

現在、徳永舞歌との交際も順調。


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