涼美先輩の「自己紹介」
文字数 448文字
答えられないでいると、その人は長い黒髪をかき上げて、静かに微笑した。
そうすると、この人は演劇部の2年生か3年生ということになる。でも、そんなに人数はいないはずなのに、どうしても思い出せない。
先輩に見とれていたせいもあったけど、心当たりがないので、やはり返事できなかった。小さくため息ひとつついて、ブレザー姿の女子生徒が黒髪をなびかせて立ち上がる。
先輩の頭上を、何かキラキラしたものが群れになって飛んでいく。
まだぼんやりしていた僕に呆れたんだろう、暗い影になった風間先輩はつぶやいた。
言われるまでもないけど、心当たりのない人にそう言われても実感がない。頷くことしかできない僕に、先輩は困ったように頭を掻いて告げた。