キスの恐るべき代償

文字数 493文字

これ……命令のキスだから。
命……令?
これで三坂君が私の新しいシャドウ。
(そういう……意味で? 涙流すか、普通……)
 ただ、このキスがどんな思いを込めたものかは分からなかった。
 分かるのは、一番恐ろしい結末になったということだけだった。
じゃあ、シャドウは?
 どういう意味かは聞かないで、不安を抱えたままなのはいやだった。
本物になる。
いやだ。
 予想した答えが返ってきて、僕は涼美先輩の腕を振りほどいた。
もう、何も問題ないわ。

 涼美先輩は不思議そうに言った。

 確かに、それは僕が一度は望んだことだった。でも、そんなバカなことをしたとは絶対に認めたくなかった。

僕は帰る。
帰ってどうするの?
 駄々をこねる子供をなだめるような口調だったけども、僕は首を横に振った。
それでいいんだ。
 困ったように、先輩は僕をなだめる。
徳永さんは都筑君のことが好きなんだけど?

 痛いところを突いてくる。そうなのだ。元の代役に戻ったところで、舞歌にとって僕は臨時のにわか役者に過ぎない。

 かまうものか。

それでもいい。
今のあなたで舞台に上がったら、失敗して嫌われるだけよ。
 どんな言葉で説得されても、聞くつもりはなかった。
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登場人物紹介

三坂朔(みさか さく)

 ヤル気なしの高校1年生。

 帰宅部だったのに、演劇部員の地区大会代役として舞台に引っ張り出されて、汗みどろのシゴキに耐える日々を送っている。

 サボリ癖が強い上にムッツリスケベといいところなしだが、苦境にある者を見ると、放ってはおけない。

 幼馴染への恋には最近気づいたが、間に合わなかった。

徳永舞歌(とくなが まいか)

 劇作に夢中の高1女子。 

 役者修行に加えて戯曲執筆もこなす、やる気満々の才女。

 そのせいで朔の気持ちには気付かず(というか、もともと眼中にない)、勉強に恋にと高校生活を満喫している。

 普段は無邪気な天然少女だが、稽古の間は悪鬼羅刹と化す。

 

 

風間涼美(かざま すずみ)

 才色兼備の高3女子。

 蠱惑的な肢体を持ちながら、部活でも学校でも目立たないのは、(文字通り)次元の違う世界で生きているからである。

 即興の4行詩を吟ずることで、人間の肉体を乗っ取ろうとする異界の魔物を祓うことができる。

 実はお茶目で、年下の男性をからかうのが大好きだったりする。

シャドウ

 文字通りの「影」だが、熱い心と深い洞察力を秘めている。

 ふだんは学生服を着て、風間涼美と行動を共にしている。

 異界の魔物と接触すると、涼美の詠唱する詩の持つパワーを実体化して闘う。

都筑幸威(つづき ゆきたけ)

頭良し、ルックスよし、人望アリの完璧高2男子。

演劇部でも役者として、大会上演作品の中心となっている。

現在、徳永舞歌との交際も順調。


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