まるでもう1人の僕みたいに

文字数 445文字

 顔も背格好も、僕そっくりだ。もしかすると、気づかれないのはそのせいかもしれなかった。でも、それだけだったら先生はぶつかったりなどしないだろう。明らかに、見えていないのだ。
涼美先輩?
気分はどう?
 優しい声がいたわってくれたけど、それには答えないで、声をひそめて尋ねた。

あれ、何ですか?
シャドウよ、あなたの。

 それがどうしたという感じの答え方だったが、いまひとつ、ピンとこない。

僕……の?
まあ、見てなさい。

 こうして、何やら自信たっぷりな涼美先輩に命じられるままに、シャドウは稽古の間中、舞台に立った僕の背中について歩いたのだった。


……。
……。

 いつも僕と同じ場所に立っているのは何となく分かるけど、一言も、しゃべりはしない。

 演出の上級生が何を言っても、返事もしないのだ。

 三坂君、もうちょっとセンター手前寄りに立って。
ああ……はい。
……。

 僕が歩くと、同じリズムで音もなくついてくる。涼美先輩には悪いけど、なんだか気味が悪い。

 それはまるで、舞歌の書いた台本に登場する影法師のようだった。

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登場人物紹介

三坂朔(みさか さく)

 ヤル気なしの高校1年生。

 帰宅部だったのに、演劇部員の地区大会代役として舞台に引っ張り出されて、汗みどろのシゴキに耐える日々を送っている。

 サボリ癖が強い上にムッツリスケベといいところなしだが、苦境にある者を見ると、放ってはおけない。

 幼馴染への恋には最近気づいたが、間に合わなかった。

徳永舞歌(とくなが まいか)

 劇作に夢中の高1女子。 

 役者修行に加えて戯曲執筆もこなす、やる気満々の才女。

 そのせいで朔の気持ちには気付かず(というか、もともと眼中にない)、勉強に恋にと高校生活を満喫している。

 普段は無邪気な天然少女だが、稽古の間は悪鬼羅刹と化す。

 

 

風間涼美(かざま すずみ)

 才色兼備の高3女子。

 蠱惑的な肢体を持ちながら、部活でも学校でも目立たないのは、(文字通り)次元の違う世界で生きているからである。

 即興の4行詩を吟ずることで、人間の肉体を乗っ取ろうとする異界の魔物を祓うことができる。

 実はお茶目で、年下の男性をからかうのが大好きだったりする。

シャドウ

 文字通りの「影」だが、熱い心と深い洞察力を秘めている。

 ふだんは学生服を着て、風間涼美と行動を共にしている。

 異界の魔物と接触すると、涼美の詠唱する詩の持つパワーを実体化して闘う。

都筑幸威(つづき ゆきたけ)

頭良し、ルックスよし、人望アリの完璧高2男子。

演劇部でも役者として、大会上演作品の中心となっている。

現在、徳永舞歌との交際も順調。


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