最後のチャンス
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でも、ダメだった。
シャドウは観客の呼吸までも支配していて、どのタイミングで何をすれば舞台に集中させられるか、よく分かっているようだった。
だから、僕が何かしようとすると涼美先輩の命令を忠実に実行して、劇を破綻させることがないように一部の隙も無くフォローしてしまうのだった。
舞歌の気持ちを考えたら、下手に動くことはできない。この舞台を壊すぐらいなら、一生、シャドウについて歩くほうがマシだった。
だけど。
やがて他の役者が出ていって、舞台は夜の公園のシーンになる。幕が降りるまで、あと何分もない。
それを稽古で知っていた僕は、シャドウが舞台の中央から離れるたびに、それまでいた場所へ猛ダッシュをかけた。