僕は本当の影になった
文字数 443文字
シャワールームを出るところなんか見られたら、人生が終わるのは僕だけじゃない。
日が昇る前の真っ青な空気の中、涼美先輩とこそこそ出てきたら、まるでやましいことでもしていたみたいじゃないか!
そういえば、そうだった。
涼美先輩と、シャドウの代わりに影になった僕は、いつもより少し深い次元にいるのだ。
見えてないと分かってはいても、この2人を見てはさすがに足がすくんだ。
本番前の、最後の通し稽古に向かうのだ。
見えやしないと分かっていても、舞歌を目の前にすると、夕べのシャワーとかキスとかいろいろ思い出して後ろめたい気がした。
でも、もっとズキンと来たのは、昔みたいにじゃれ合いながら隣を歩いている僕が、僕自身じゃないということだった。