僕と学者、シャドウと影法師と
文字数 414文字
おめでとう……とは言ってくれないのかな？ 私の分身なのに。
おまえ……！
君がＵＳＢのパスワードを解いてくれたおかげさ、こうして、あのお嬢さんと婚約できるのも。
令嬢との仲を深めていく影法師を、学者は止められない。まるで、都筑と舞歌が付き合うのを黙って見ているしかない僕みたいに。
立場は同じなのに、その学者を演じるシャドウの先回りをすることはできなかった。
（いや……まだチャンスはある！ あのシーンなら！）
学者は、令嬢のオフィスに忍び込む。
お静かに！ 聞いていただきたいことがあります。
何ですの？ 人を呼んだりしませんから、どうぞお話しください。
別のチャンスが来た。
（学者のセリフで、令嬢やってる舞歌に……僕の気持ちを）
次元が違うからどっちみち聞こえないし、今はシャドウを出し抜く時だ。
あのパスワードを解いたのは、私です。
でも、シャドウの前に出ようとする分、僕のセリフは出遅れる。結局、学者として喋ったのはシャドウだった。
