先輩の残した……。

文字数 402文字

すまん、礼が遅れた。
 手を合わせてウインクなんかしてるのは、都筑だった。
(……男に愛想振りまかれても面白くないわい)
 もちろん、それは口には出さない。舞歌の前だ。
……?
 きょとんとする幼馴染の前で、ちょっといい格好をしてみせる。
あんまり舞歌を困らせんなよ。
 シャドウの口調を真似てみたら、何だか悔しくはなくなった。歩き方も意識してみたりする。 
朔……何か悪いものでも食べた?
……。

 舞歌の冷めた一言に返事はしないで、2人に背中を向けて楽屋へ向かう。涼美先輩の歌が身体に流れ込んできたみたいに力が手足にあふれてきた。

あ……。
 手を入れたポケットが、後で都筑が使うかもしれない衣装だったことに気がついた。
(まずい……)
 手を出してみると、まだあの紙切れを握っている。
 開いてみると、詩が一編書いてあった。
 己を知れ 光も影も
 汝を知るもの これにあり
 目を背くなかれ 己の闇から
 そは汝の来たりしところなれば
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

三坂朔(みさか さく)

 ヤル気なしの高校1年生。

 帰宅部だったのに、演劇部員の地区大会代役として舞台に引っ張り出されて、汗みどろのシゴキに耐える日々を送っている。

 サボリ癖が強い上にムッツリスケベといいところなしだが、苦境にある者を見ると、放ってはおけない。

 幼馴染への恋には最近気づいたが、間に合わなかった。

徳永舞歌(とくなが まいか)

 劇作に夢中の高1女子。 

 役者修行に加えて戯曲執筆もこなす、やる気満々の才女。

 そのせいで朔の気持ちには気付かず(というか、もともと眼中にない)、勉強に恋にと高校生活を満喫している。

 普段は無邪気な天然少女だが、稽古の間は悪鬼羅刹と化す。

 

 

風間涼美(かざま すずみ)

 才色兼備の高3女子。

 蠱惑的な肢体を持ちながら、部活でも学校でも目立たないのは、(文字通り)次元の違う世界で生きているからである。

 即興の4行詩を吟ずることで、人間の肉体を乗っ取ろうとする異界の魔物を祓うことができる。

 実はお茶目で、年下の男性をからかうのが大好きだったりする。

シャドウ

 文字通りの「影」だが、熱い心と深い洞察力を秘めている。

 ふだんは学生服を着て、風間涼美と行動を共にしている。

 異界の魔物と接触すると、涼美の詠唱する詩の持つパワーを実体化して闘う。

都筑幸威(つづき ゆきたけ)

頭良し、ルックスよし、人望アリの完璧高2男子。

演劇部でも役者として、大会上演作品の中心となっている。

現在、徳永舞歌との交際も順調。


ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色