本当の気持ち

文字数 430文字

じゃあ、三坂君が君を?
守れるわけないわ。
 はっきり言われると、結構、胸に痛い。でも、今の僕はシャドウだ。遥かに劣っているのを認めてみせるしかない。
そうだね。

 自分で言うのも情けなかった。でも、舞台での代役も務まらない僕が、涼美先輩を守るために命懸けで戦っているシャドウの真似なんかできるはずがない。

 でも、涼美先輩はハッキリと言った。

三坂君は、もう大丈夫よ。
 意外なところで、涼美先輩が認めてくれていた。
涼美せん……ぱ……。
何? 

 どんなふうに言えばいいのか、いや、言っていいのか悪いのか分からずに、僕は口ごもる。それだけの実力がないとはいえ、一応はシャドウなのだから。

 でも、涼美先輩が見ていてくれたのだと思うと、このときばかりは、シャドウを離れて本当の気持ちを口にすることができた。

……そうだね。
 もう、何にも怖くなかった。舞歌の目が僕に向いていないことに気付いてからこっち、心に重くのしかかっていたものが、涼美先輩の一言で一気に消し飛んだような気がした。
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登場人物紹介

三坂朔(みさか さく)

 ヤル気なしの高校1年生。

 帰宅部だったのに、演劇部員の地区大会代役として舞台に引っ張り出されて、汗みどろのシゴキに耐える日々を送っている。

 サボリ癖が強い上にムッツリスケベといいところなしだが、苦境にある者を見ると、放ってはおけない。

 幼馴染への恋には最近気づいたが、間に合わなかった。

徳永舞歌(とくなが まいか)

 劇作に夢中の高1女子。 

 役者修行に加えて戯曲執筆もこなす、やる気満々の才女。

 そのせいで朔の気持ちには気付かず(というか、もともと眼中にない)、勉強に恋にと高校生活を満喫している。

 普段は無邪気な天然少女だが、稽古の間は悪鬼羅刹と化す。

 

 

風間涼美(かざま すずみ)

 才色兼備の高3女子。

 蠱惑的な肢体を持ちながら、部活でも学校でも目立たないのは、(文字通り)次元の違う世界で生きているからである。

 即興の4行詩を吟ずることで、人間の肉体を乗っ取ろうとする異界の魔物を祓うことができる。

 実はお茶目で、年下の男性をからかうのが大好きだったりする。

シャドウ

 文字通りの「影」だが、熱い心と深い洞察力を秘めている。

 ふだんは学生服を着て、風間涼美と行動を共にしている。

 異界の魔物と接触すると、涼美の詠唱する詩の持つパワーを実体化して闘う。

都筑幸威(つづき ゆきたけ)

頭良し、ルックスよし、人望アリの完璧高2男子。

演劇部でも役者として、大会上演作品の中心となっている。

現在、徳永舞歌との交際も順調。


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