気付くのが遅すぎた恋

文字数 454文字

 それが変わったのは、入学式の終わった日の午後のことだった。
朔! どう? 似合う?
え……あ、ああ……。
何、そのリアクション! なんかムカつく!
あ、ああ……可愛いよ、うん。
わざとらしいんだから! もういいです!

 返事をしなかったんじゃない。できなかった。

 桜の花びらが舞い散るなかで見た、舞歌のブレザーがドキッとするほどかわいかったのだ。

 何だか胸の中がもやもやしだして、入学式まではいつも一緒に学校行ったり家帰ったりしていたのが、照れ臭くなった。舞歌も演劇部に入って忙しくなったのか、学校でしか顔を合わせなくなった。

久しぶり……っていうか、どう? 最近。
まあまあ……かな。
 クラスも別々で、5月の連休明けの中間テストが終わってみたら……。
意外だったんだけど……。
え……お前、学年トップ?
朔は?
いや、その……。

 赤点の補充授業グループになっていたなんて、恥ずかしくて言えなかった。

 いつもは帰宅部だったのに居残りを食らい、部活が終わった生徒と帰る時間帯がたまたま同じになったのが、僕のドキドキにとどめを刺した。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

三坂朔(みさか さく)

 ヤル気なしの高校1年生。

 帰宅部だったのに、演劇部員の地区大会代役として舞台に引っ張り出されて、汗みどろのシゴキに耐える日々を送っている。

 サボリ癖が強い上にムッツリスケベといいところなしだが、苦境にある者を見ると、放ってはおけない。

 幼馴染への恋には最近気づいたが、間に合わなかった。

徳永舞歌(とくなが まいか)

 劇作に夢中の高1女子。 

 役者修行に加えて戯曲執筆もこなす、やる気満々の才女。

 そのせいで朔の気持ちには気付かず(というか、もともと眼中にない)、勉強に恋にと高校生活を満喫している。

 普段は無邪気な天然少女だが、稽古の間は悪鬼羅刹と化す。

 

 

風間涼美(かざま すずみ)

 才色兼備の高3女子。

 蠱惑的な肢体を持ちながら、部活でも学校でも目立たないのは、(文字通り)次元の違う世界で生きているからである。

 即興の4行詩を吟ずることで、人間の肉体を乗っ取ろうとする異界の魔物を祓うことができる。

 実はお茶目で、年下の男性をからかうのが大好きだったりする。

シャドウ

 文字通りの「影」だが、熱い心と深い洞察力を秘めている。

 ふだんは学生服を着て、風間涼美と行動を共にしている。

 異界の魔物と接触すると、涼美の詠唱する詩の持つパワーを実体化して闘う。

都筑幸威(つづき ゆきたけ)

頭良し、ルックスよし、人望アリの完璧高2男子。

演劇部でも役者として、大会上演作品の中心となっている。

現在、徳永舞歌との交際も順調。


ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色