廊下の冒険

文字数 541文字

うわわっ!
シャドウ?
 目の前を鳥だか蝶だか分からないモノが、ふわふわと壁を抜けて飛び交う。
あれ……は?
見慣れたもんでしょう? あんなの。
 窓からの光に青く照らされた夜の廊下を一緒に駆け抜けながら、涼美先輩は訝しげに尋ねた。ここでうまく切り抜けないと、シャドウのふりをしているのは一発でバレる。
ふ……見慣れたものほど、本当の姿が気になるものさ。
……哲学ね。
 なんとか、シャドウだって認めてもらえたみたいだった。
怖いと思ったことは、ないのか?
 うまく行ったので調子に乗って聞いてみると、ふふ、という笑い声が聞こえた。
シャドウと一緒なら、怖くなかったわ。

 なんか、ムカッと来た。僕なんか舞歌とずっと一緒にいたのに、都筑がいきなり現れたら、こんなふうになってしまったのに。

 涼美先輩も、あんな影のどこがいいのか分からない。

俺たち、いつからこんなんだったっけな。
 シャドウのふりだってバレそうな気もしたけど、納得いかないので聞かないではいられなかった。でも、涼美先輩のほうが一枚上手だった。
あっちの次元で、私たちが出会ったときから。

 僕の負けだった。とりあえず、それ以上は聞かないことにした。ボロが出そうだったし、何よりも、シャドウと涼美先輩の強い絆が分かったからだ。

 羨ましくなるくらいに。

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登場人物紹介

三坂朔(みさか さく)

 ヤル気なしの高校1年生。

 帰宅部だったのに、演劇部員の地区大会代役として舞台に引っ張り出されて、汗みどろのシゴキに耐える日々を送っている。

 サボリ癖が強い上にムッツリスケベといいところなしだが、苦境にある者を見ると、放ってはおけない。

 幼馴染への恋には最近気づいたが、間に合わなかった。

徳永舞歌(とくなが まいか)

 劇作に夢中の高1女子。 

 役者修行に加えて戯曲執筆もこなす、やる気満々の才女。

 そのせいで朔の気持ちには気付かず(というか、もともと眼中にない)、勉強に恋にと高校生活を満喫している。

 普段は無邪気な天然少女だが、稽古の間は悪鬼羅刹と化す。

 

 

風間涼美(かざま すずみ)

 才色兼備の高3女子。

 蠱惑的な肢体を持ちながら、部活でも学校でも目立たないのは、(文字通り)次元の違う世界で生きているからである。

 即興の4行詩を吟ずることで、人間の肉体を乗っ取ろうとする異界の魔物を祓うことができる。

 実はお茶目で、年下の男性をからかうのが大好きだったりする。

シャドウ

 文字通りの「影」だが、熱い心と深い洞察力を秘めている。

 ふだんは学生服を着て、風間涼美と行動を共にしている。

 異界の魔物と接触すると、涼美の詠唱する詩の持つパワーを実体化して闘う。

都筑幸威(つづき ゆきたけ)

頭良し、ルックスよし、人望アリの完璧高2男子。

演劇部でも役者として、大会上演作品の中心となっている。

現在、徳永舞歌との交際も順調。


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