危険への脱出
文字数 488文字
無事だった脳天に、ゲンコツが降ってくる。
目から火花が出るくらい、思いっきりぶん殴ったくせに。
その割に、この笑顔だ。真っ青な月の光に照らされて、ゾクっとくるほどきれいに見えた。
でも、先輩の口調から察するに、僕のやったことはシャドウには及びもつかなかったらしい。たぶん、見当外れのダンスでしかなかったんだろう。
余りにも格好悪いので、何とか渋くキメてみせたつもりだった。
だけど、慣れないことはするもんじゃない。自分でも板についてない気がして、次の言葉に困った。
妙な沈黙だけが、しばらく続く。
やがて、涼美先輩が無理やり気を取り直そうとするかのように、気の抜けた返事をした。