僕が見えない理由
文字数 412文字
涼美先輩も、同じことを感じたらしい。ちょっとの間、何も言わなかったけど、やがてホウキとモップとバケツを手に取って言った。
仕方なさそうに念を押すのに、僕は生返事で答えた。目を離せないくらい、舞歌がかわいかったからだ。それを敢えて邪魔するように、涼美先輩は頭の上から一方的に説教した。
ステージに気を取られて、ちょっと理解できなかった。やっと先輩の話を聞くことができたのは、令嬢が席を外して、舞歌の出番が終わったからだ。
僕がいた辺りを確かめてみると、そうだった気もする。
悟りの鈍い僕へのイライラとした声が、話を続ける。