涼美先輩だけが僕を……。

文字数 434文字

そのバス、待ってくださああああい!
朔くん!
バスのステップに立った涼美先輩に引っ張り上げてもらって、僕は駆け込み乗車に成功した。
ひどいですよ、先輩……置いていくなんて!
私も焦ったわよ! 何やってたの! 自分が影になってること忘れないで!

 これが、涼美先輩と同じ次元で生きるということだった。

 誰も、僕を見てくれない。気づいてくれない。誰に気兼ねすることもいらないけど、自分のことは完全に自分でやらなくてはいけないのだった。

スペアの衣装……探してたんです。
何で……あれ、上の大会に進んでからでしょう?

 この大会で上位入賞すれば、都道府県レベルの大会に行ける。でも、それまでは1週間くらいしかない。万が一、衣装が破れたり汚れたりしても、直せないこともあるらしい。

 そのときのことを考えて、衣装担当はスペアまで準備していた。

 本番で……シャドウと入れ替わります。
どうやって?
シャドウを……僕の影にします!

 一か八か。

 僕は、自分のやったことの後始末をつけることにしたのだった。

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登場人物紹介

三坂朔(みさか さく)

 ヤル気なしの高校1年生。

 帰宅部だったのに、演劇部員の地区大会代役として舞台に引っ張り出されて、汗みどろのシゴキに耐える日々を送っている。

 サボリ癖が強い上にムッツリスケベといいところなしだが、苦境にある者を見ると、放ってはおけない。

 幼馴染への恋には最近気づいたが、間に合わなかった。

徳永舞歌(とくなが まいか)

 劇作に夢中の高1女子。 

 役者修行に加えて戯曲執筆もこなす、やる気満々の才女。

 そのせいで朔の気持ちには気付かず(というか、もともと眼中にない)、勉強に恋にと高校生活を満喫している。

 普段は無邪気な天然少女だが、稽古の間は悪鬼羅刹と化す。

 

 

風間涼美(かざま すずみ)

 才色兼備の高3女子。

 蠱惑的な肢体を持ちながら、部活でも学校でも目立たないのは、(文字通り)次元の違う世界で生きているからである。

 即興の4行詩を吟ずることで、人間の肉体を乗っ取ろうとする異界の魔物を祓うことができる。

 実はお茶目で、年下の男性をからかうのが大好きだったりする。

シャドウ

 文字通りの「影」だが、熱い心と深い洞察力を秘めている。

 ふだんは学生服を着て、風間涼美と行動を共にしている。

 異界の魔物と接触すると、涼美の詠唱する詩の持つパワーを実体化して闘う。

都筑幸威(つづき ゆきたけ)

頭良し、ルックスよし、人望アリの完璧高2男子。

演劇部でも役者として、大会上演作品の中心となっている。

現在、徳永舞歌との交際も順調。


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