舞台の上での「影」のお仕事

文字数 411文字

 それでも、今までのことを考えると、涼美先輩の要求に応じるわけにはいかなかった。
知ってるでしょう、今、すごくうまくいってるの。
だって、私の「シャドウ」だもの。

 涼美先輩は誇らしげだった。

 「シャドウ」……先輩と僕の他には誰にも見えない「影」。

 役者なんかやったことのない僕の耳元で台詞を囁き、マリオネットを操るように僕の動きを背後でリードしているのが、先輩の言う「シャドウ」なのだった。

だから、このまま僕の代わりに明日も……。

 実は、今、「シャドウ」僕の代わりに舞台に立っている。明日いきなり入れ替わっても、同じことができるという自信はなかった。

 でも、そこらへんについて、涼美先輩は厳しかった。

あれ、卑怯じゃない?
 確かに言い訳は立たないかもしれないけど、僕には僕の言い分があった。
だって、舞歌も……。
何でそこで、あなたの幼馴染の名前が出るのかしら? 恥ずかしいと思わないの?
いいんです、僕は……それで舞歌が喜ぶんなら!
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登場人物紹介

三坂朔(みさか さく)

 ヤル気なしの高校1年生。

 帰宅部だったのに、演劇部員の地区大会代役として舞台に引っ張り出されて、汗みどろのシゴキに耐える日々を送っている。

 サボリ癖が強い上にムッツリスケベといいところなしだが、苦境にある者を見ると、放ってはおけない。

 幼馴染への恋には最近気づいたが、間に合わなかった。

徳永舞歌(とくなが まいか)

 劇作に夢中の高1女子。 

 役者修行に加えて戯曲執筆もこなす、やる気満々の才女。

 そのせいで朔の気持ちには気付かず(というか、もともと眼中にない)、勉強に恋にと高校生活を満喫している。

 普段は無邪気な天然少女だが、稽古の間は悪鬼羅刹と化す。

 

 

風間涼美(かざま すずみ)

 才色兼備の高3女子。

 蠱惑的な肢体を持ちながら、部活でも学校でも目立たないのは、(文字通り)次元の違う世界で生きているからである。

 即興の4行詩を吟ずることで、人間の肉体を乗っ取ろうとする異界の魔物を祓うことができる。

 実はお茶目で、年下の男性をからかうのが大好きだったりする。

シャドウ

 文字通りの「影」だが、熱い心と深い洞察力を秘めている。

 ふだんは学生服を着て、風間涼美と行動を共にしている。

 異界の魔物と接触すると、涼美の詠唱する詩の持つパワーを実体化して闘う。

都筑幸威(つづき ゆきたけ)

頭良し、ルックスよし、人望アリの完璧高2男子。

演劇部でも役者として、大会上演作品の中心となっている。

現在、徳永舞歌との交際も順調。


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