そして本番前日の夜へ

文字数 409文字

(何日くらい前だっけ? あれ……)
 その日からというもの、僕は部活に出るだけで、舞台に出るのはシャドウに任せ続けたのだった。
(といっても、涼美先輩にバレたらアウトだからな……)
 シャドウが僕のミスをカバーしに前に出ると、僕はシャドウのふりをして後ろで台詞と動作を真似し続けた。
(よく今夜まで……)
 とうとう涼美先輩も気が付かなかったみたいで、ようやく呼び出されても、そのことは責められなかった。
私ひとりじゃ、怖い。
 窓から差し込む月の光を全身に浴びて、涼美先輩はしなやかな腕で身体を抱えて震え出した。
(そりゃ恐ろしいだろうな……あの異世界であんなわけの分からないのと戦うのは)
いつ、あなたみたいに身体を乗っ取られるか。
身体?
 あの、青白いコートの男だ。身体にぞくっと入り込んできた冷たい手の感触は、まだどこかに残っている。
あいつらはね、私たちの世界の住人。実体がなくて、生きた身体を乗っ取るの……生気を食い尽くすまで。
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登場人物紹介

三坂朔(みさか さく)

 ヤル気なしの高校1年生。

 帰宅部だったのに、演劇部員の地区大会代役として舞台に引っ張り出されて、汗みどろのシゴキに耐える日々を送っている。

 サボリ癖が強い上にムッツリスケベといいところなしだが、苦境にある者を見ると、放ってはおけない。

 幼馴染への恋には最近気づいたが、間に合わなかった。

徳永舞歌(とくなが まいか)

 劇作に夢中の高1女子。 

 役者修行に加えて戯曲執筆もこなす、やる気満々の才女。

 そのせいで朔の気持ちには気付かず(というか、もともと眼中にない)、勉強に恋にと高校生活を満喫している。

 普段は無邪気な天然少女だが、稽古の間は悪鬼羅刹と化す。

 

 

風間涼美(かざま すずみ)

 才色兼備の高3女子。

 蠱惑的な肢体を持ちながら、部活でも学校でも目立たないのは、(文字通り)次元の違う世界で生きているからである。

 即興の4行詩を吟ずることで、人間の肉体を乗っ取ろうとする異界の魔物を祓うことができる。

 実はお茶目で、年下の男性をからかうのが大好きだったりする。

シャドウ

 文字通りの「影」だが、熱い心と深い洞察力を秘めている。

 ふだんは学生服を着て、風間涼美と行動を共にしている。

 異界の魔物と接触すると、涼美の詠唱する詩の持つパワーを実体化して闘う。

都筑幸威(つづき ゆきたけ)

頭良し、ルックスよし、人望アリの完璧高2男子。

演劇部でも役者として、大会上演作品の中心となっている。

現在、徳永舞歌との交際も順調。


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