そして劇は動き出す
文字数 408文字
君が払うって言ったじゃないか、このホテル。
シャドウの演じる学者が、共に旅を続けてきた自らの影法師と議論を始めた。だが、その研究成果を横取りして裕福になった影法師も負けてはいない。
冷蔵庫の中のものまで払うとは言ってない。
君の説明が足りないんだ。
君、じゃなくて、あなた、と呼んでくれませんかね、失礼な。
ずる賢い影法師が問題をすり替えたところで、ホテルの支配人が、舞歌の演じる令嬢を連れてやってくる。
先ほどお話しいたしましたのが、この方です。
初めまして……急にお邪魔してすみません。
いいえ、お気になさらず。
……あなたは！
令嬢をじっと見つめていた学者が、何かを思い出したように突然立ち上がった。
もちろん、これはシャドウの演技だ。
悔しいけど、僕にはここまでやれない。舞歌の前で恥をかきたくないばかりに、今までシャドウに身代わりをやらせてきたからだ。
初めて、自分のバカさ加減を後悔した。
だから、やるなら今しかない。
