筋道の通らない会話

文字数 476文字

とりあえず、朝になれば。
そうだな。
 ほっと一息ついた涼美先輩に話を合わせると、また頭を叩かれた。

夜が明けたら、あんたはさっさと出るの!
俺はシャドウだから見えない。
あ、そうか!

 筋道の通らない話に、二人で、息を殺して笑った。

 ついでに僕は自分の疑問を、シャドウとして口にしてみた。

何で俺たち、わざわざこっちで暮らしてるんだろな。
あっちにはそんなに長いこといられないじゃない。
 涼美先輩の影が薄いわけだ。でも、2つの世界で見るものは、建物から何から全部同じだ。それについては、こんな風に聞いてみた。
そうだな、行ったり来たり便利だけど。
まあ、あっちとこっちで使ってるものは全部同じだし。
 つまり、住んでいる次元だけが違うらしい。でも、今、僕はシャドウと入れ替わってここにいる。これにも時間制限があるのか尋ねてみた。
もし、三坂が俺と入れ替わったままだったらどうなったろうな。
さあ……。
 その答えが出る前に、ドアのカギが回る音がした。慌てて涼美先輩と脱衣場の隅に引っ込むと、天井の明かりがついた。あの幽体がそんなことをするはずがない。普通の人間がやってきたのだ。
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登場人物紹介

三坂朔(みさか さく)

 ヤル気なしの高校1年生。

 帰宅部だったのに、演劇部員の地区大会代役として舞台に引っ張り出されて、汗みどろのシゴキに耐える日々を送っている。

 サボリ癖が強い上にムッツリスケベといいところなしだが、苦境にある者を見ると、放ってはおけない。

 幼馴染への恋には最近気づいたが、間に合わなかった。

徳永舞歌(とくなが まいか)

 劇作に夢中の高1女子。 

 役者修行に加えて戯曲執筆もこなす、やる気満々の才女。

 そのせいで朔の気持ちには気付かず(というか、もともと眼中にない)、勉強に恋にと高校生活を満喫している。

 普段は無邪気な天然少女だが、稽古の間は悪鬼羅刹と化す。

 

 

風間涼美(かざま すずみ)

 才色兼備の高3女子。

 蠱惑的な肢体を持ちながら、部活でも学校でも目立たないのは、(文字通り)次元の違う世界で生きているからである。

 即興の4行詩を吟ずることで、人間の肉体を乗っ取ろうとする異界の魔物を祓うことができる。

 実はお茶目で、年下の男性をからかうのが大好きだったりする。

シャドウ

 文字通りの「影」だが、熱い心と深い洞察力を秘めている。

 ふだんは学生服を着て、風間涼美と行動を共にしている。

 異界の魔物と接触すると、涼美の詠唱する詩の持つパワーを実体化して闘う。

都筑幸威(つづき ゆきたけ)

頭良し、ルックスよし、人望アリの完璧高2男子。

演劇部でも役者として、大会上演作品の中心となっている。

現在、徳永舞歌との交際も順調。


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