異界の死闘

文字数 449文字

 尋ねながら、学生服の影は青白いコートの男に、ゆらり、ゆらりと左右に緩やかなステップを踏みながら迫っていく。相手もまた、それを牽制するように身体を揺らした。
 さっきの声が命じる。
攻めよ!
おお!
 学生服の方が先に動いた。すさまじい速さの足さばきで身体を回転させながら、振り上げた両手両足を叩きつける。コート姿のほうはというと、背中を丸めて跳んでかわす。
 声が鋭く叫んだ。
討て!
 後を追って跳んだ学生服が、コートの男の身体を抱える。そのまま逆さまになって、アスファルトの地面に落ちた。真っ青な火柱が上がって、2つの影をかき消す。
わ、わわ……。

 だが、その一方だけは、炎を背にした黒い影法師となって現れた。

 その間、僕はどの辺まで立っていたのかよく覚えていない。気が付いたら、行進には参加しなかったらしい電信柱の根元で腰を抜かしていた。

 黒い影法師が立ち止まって、僕を見下ろす。

で、こいつは?
 その頭の向こうでは、白い衣をまとった爺さん婆さんが、トンボの羽の生えた子供たちと輪になってくるくる飛んでいた。
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登場人物紹介

三坂朔(みさか さく)

 ヤル気なしの高校1年生。

 帰宅部だったのに、演劇部員の地区大会代役として舞台に引っ張り出されて、汗みどろのシゴキに耐える日々を送っている。

 サボリ癖が強い上にムッツリスケベといいところなしだが、苦境にある者を見ると、放ってはおけない。

 幼馴染への恋には最近気づいたが、間に合わなかった。

徳永舞歌(とくなが まいか)

 劇作に夢中の高1女子。 

 役者修行に加えて戯曲執筆もこなす、やる気満々の才女。

 そのせいで朔の気持ちには気付かず(というか、もともと眼中にない)、勉強に恋にと高校生活を満喫している。

 普段は無邪気な天然少女だが、稽古の間は悪鬼羅刹と化す。

 

 

風間涼美(かざま すずみ)

 才色兼備の高3女子。

 蠱惑的な肢体を持ちながら、部活でも学校でも目立たないのは、(文字通り)次元の違う世界で生きているからである。

 即興の4行詩を吟ずることで、人間の肉体を乗っ取ろうとする異界の魔物を祓うことができる。

 実はお茶目で、年下の男性をからかうのが大好きだったりする。

シャドウ

 文字通りの「影」だが、熱い心と深い洞察力を秘めている。

 ふだんは学生服を着て、風間涼美と行動を共にしている。

 異界の魔物と接触すると、涼美の詠唱する詩の持つパワーを実体化して闘う。

都筑幸威(つづき ゆきたけ)

頭良し、ルックスよし、人望アリの完璧高2男子。

演劇部でも役者として、大会上演作品の中心となっている。

現在、徳永舞歌との交際も順調。


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