深い次元へ……。

文字数 430文字

そういえば……。
 いつもはステージまで響いてきて、セリフのやりとりを邪魔する体育会の掛け声が聞こえない。
分かるでしょう? ちょっと次元をずらすだけなら、こんなこともできるの。これは、音だけがとどかないレベルね。
ちょっと?
もっと次元をずらせば、今、見えている体育館だって消えてなくなるわ。代わりに、見えなかったものが見えてくるようになる。
 そこで僕は、シャドウと出会った……涼美先輩に気付いた晩のことを思い出した。
じゃ、あれ、全部? 

 僕にいきなりおそいかかってきた、青白いコートの男。

 手に手を取って夜空を飛ぶ、白い衣をまとった爺さん婆さん。

 公道を堂々と歩く真っ青な馬。

 あのときは疲れてたし、気も動転してたから、気にもならなかった。でも、改めて考えてみれば、この世にはあり得ないものだ。あの世なら、どうだか知らないけど。

そう、もっと深い次元ね。
 僕の言いたいことを聞かずに察したかのように答えて、涼美先輩は姿を消した。その「深い次元」に潜ったみたいだった。
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登場人物紹介

三坂朔(みさか さく)

 ヤル気なしの高校1年生。

 帰宅部だったのに、演劇部員の地区大会代役として舞台に引っ張り出されて、汗みどろのシゴキに耐える日々を送っている。

 サボリ癖が強い上にムッツリスケベといいところなしだが、苦境にある者を見ると、放ってはおけない。

 幼馴染への恋には最近気づいたが、間に合わなかった。

徳永舞歌(とくなが まいか)

 劇作に夢中の高1女子。 

 役者修行に加えて戯曲執筆もこなす、やる気満々の才女。

 そのせいで朔の気持ちには気付かず(というか、もともと眼中にない)、勉強に恋にと高校生活を満喫している。

 普段は無邪気な天然少女だが、稽古の間は悪鬼羅刹と化す。

 

 

風間涼美(かざま すずみ)

 才色兼備の高3女子。

 蠱惑的な肢体を持ちながら、部活でも学校でも目立たないのは、(文字通り)次元の違う世界で生きているからである。

 即興の4行詩を吟ずることで、人間の肉体を乗っ取ろうとする異界の魔物を祓うことができる。

 実はお茶目で、年下の男性をからかうのが大好きだったりする。

シャドウ

 文字通りの「影」だが、熱い心と深い洞察力を秘めている。

 ふだんは学生服を着て、風間涼美と行動を共にしている。

 異界の魔物と接触すると、涼美の詠唱する詩の持つパワーを実体化して闘う。

都筑幸威(つづき ゆきたけ)

頭良し、ルックスよし、人望アリの完璧高2男子。

演劇部でも役者として、大会上演作品の中心となっている。

現在、徳永舞歌との交際も順調。


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