夜の教室で二人きり
文字数 554文字
月の明かりが差し込む教室で、僕は3年生の風間涼美(かざま すずみ)先輩と2人っきりで向き合って座っていた。
あれから、どれくらい経ったろう? ものすごい昔のことみたいな気もするし、つい昨日のことみたいな気もする。
どっちにしても。
斜め上から窓格子の影が落ちているのに、そこに隠れた先輩の顔はドキっとするほどきれいだった。
そんな目をされると、背もたれに沿って身体をまっすぐに伸ばさないわけにはいかない。いかに1年生とはいえ、一応は三坂朔(はじめ)も男なので、真面目にやってないとちょっと理性に自信がない。
僕の緊張を察したのか、先輩は名前の通り涼しく美しく微笑んだ。
そう、本番が僕のゴールなのだった。だから、今夜がタイムリミットなのだ。
先輩に口ごもるしかなかったのには、事情がある。涼美先輩にしてみれば、知ったことじゃないけど。