舞歌の答えは……。

文字数 413文字

……。
 舞歌も沈黙している。
(やっちゃたか……?)
 何もかも終わったと思った、その時だった。
ありがとう……。

 僕の隣に、舞歌が歩み寄って、そっと頬にキスを送ってくれたのだ。

 観客席から冷やかしの声が上がると同時に、BGMが鳴り響いた。

初めてあなたが私に気付いた夜、私もあなたを見ていたんです。
 令嬢としての台本取りのセリフを聞きながら、そっと振り向く。シャドウの姿はもう、なかった。
(……涼美先輩はどうするだろう?)
……。
……。
 舞台袖をそっと見ると、長い黒髪の後ろ姿が、背の高い学生服の男と共に闇の中に消えるのが見えた。
聞いてます?
 恋する令嬢としての舞歌が、愛を手に入れた学者としての僕の顔をぐいと掴んで客席に向ける。
……痛てて。

 会場いっぱいの笑い声が、舞台の上では肌にまで響く。

 初めての感覚に呆然として、やがて我に返ると、目の前にはどこかで見た顔があった。

……。
 その最前列の席には、松葉杖を抱えた都筑が座っていた。
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登場人物紹介

三坂朔(みさか さく)

 ヤル気なしの高校1年生。

 帰宅部だったのに、演劇部員の地区大会代役として舞台に引っ張り出されて、汗みどろのシゴキに耐える日々を送っている。

 サボリ癖が強い上にムッツリスケベといいところなしだが、苦境にある者を見ると、放ってはおけない。

 幼馴染への恋には最近気づいたが、間に合わなかった。

徳永舞歌(とくなが まいか)

 劇作に夢中の高1女子。 

 役者修行に加えて戯曲執筆もこなす、やる気満々の才女。

 そのせいで朔の気持ちには気付かず(というか、もともと眼中にない)、勉強に恋にと高校生活を満喫している。

 普段は無邪気な天然少女だが、稽古の間は悪鬼羅刹と化す。

 

 

風間涼美(かざま すずみ)

 才色兼備の高3女子。

 蠱惑的な肢体を持ちながら、部活でも学校でも目立たないのは、(文字通り)次元の違う世界で生きているからである。

 即興の4行詩を吟ずることで、人間の肉体を乗っ取ろうとする異界の魔物を祓うことができる。

 実はお茶目で、年下の男性をからかうのが大好きだったりする。

シャドウ

 文字通りの「影」だが、熱い心と深い洞察力を秘めている。

 ふだんは学生服を着て、風間涼美と行動を共にしている。

 異界の魔物と接触すると、涼美の詠唱する詩の持つパワーを実体化して闘う。

都筑幸威(つづき ゆきたけ)

頭良し、ルックスよし、人望アリの完璧高2男子。

演劇部でも役者として、大会上演作品の中心となっている。

現在、徳永舞歌との交際も順調。


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