そして幼馴染の恋が始まる

文字数 487文字

 補充授業の初日、薄暗くなってからとぼとぼ独りで帰るところで、僕は舞歌に呼び止められた。
あ、朔! 珍しいね、何で?
いや、別に……。あれ、その人は?
あ、この人? 実は……。
 もじもじしている舞歌の言葉を、隣にいた男が引き取った。
初めまして。2年の都筑幸威(つづき ゆきたけ)です。あ、君が三坂……朔くん? よろしく。
あ、ああ、そうか、そういう……じゃ、またな、舞歌。
あ……うん、またね、朔。
 それからというもの、夕方に舞歌と都筑が仲良く部活行ったり帰ったりするのを見る日々が続いた。
は……はは……うまくやってんじゃない、舞歌も……隅に置けねえなあチクショー!
 初夏の夕日に向かって走る僕の背中から、心に突き刺さる無神経な会話が聞こえてきた。
何だろ、アレ……。
気にしないほうが、いいと思う……。
そっとしておいてあげてよ。幼馴染だろ? 君なら、遠くからでも分かってやれるんじゃないかな。
優しいね、都筑君。
 遠ざかっていく声のやり取りを、僕は泣きながら聞いていた。
うわああああ! 補充なんか、補充なんか!
 そして僕は、いつになく必死で勉強を重ね、週をまたぐことなく補充を終わらせた。
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登場人物紹介

三坂朔(みさか さく)

 ヤル気なしの高校1年生。

 帰宅部だったのに、演劇部員の地区大会代役として舞台に引っ張り出されて、汗みどろのシゴキに耐える日々を送っている。

 サボリ癖が強い上にムッツリスケベといいところなしだが、苦境にある者を見ると、放ってはおけない。

 幼馴染への恋には最近気づいたが、間に合わなかった。

徳永舞歌(とくなが まいか)

 劇作に夢中の高1女子。 

 役者修行に加えて戯曲執筆もこなす、やる気満々の才女。

 そのせいで朔の気持ちには気付かず(というか、もともと眼中にない)、勉強に恋にと高校生活を満喫している。

 普段は無邪気な天然少女だが、稽古の間は悪鬼羅刹と化す。

 

 

風間涼美(かざま すずみ)

 才色兼備の高3女子。

 蠱惑的な肢体を持ちながら、部活でも学校でも目立たないのは、(文字通り)次元の違う世界で生きているからである。

 即興の4行詩を吟ずることで、人間の肉体を乗っ取ろうとする異界の魔物を祓うことができる。

 実はお茶目で、年下の男性をからかうのが大好きだったりする。

シャドウ

 文字通りの「影」だが、熱い心と深い洞察力を秘めている。

 ふだんは学生服を着て、風間涼美と行動を共にしている。

 異界の魔物と接触すると、涼美の詠唱する詩の持つパワーを実体化して闘う。

都筑幸威(つづき ゆきたけ)

頭良し、ルックスよし、人望アリの完璧高2男子。

演劇部でも役者として、大会上演作品の中心となっている。

現在、徳永舞歌との交際も順調。


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