キノッピ 11
文字数 1,689文字
教会はその日、気絶から復活したセルゲイ、包帯を頭にまいたヒョードル、まひるのバトルに奮える僕の3人で後片付けをした。
普通は教会のようなところは信徒が沢山いて教会に何かあれば総動員で対応するものだ。
でも、この怪しいロシア正教会はいくら時間が経っても誰一人訪ねてくる様子はなかった。
「信徒さんはいないんですか?」
セルゲイに聞くと、
「司祭と3人でやってる」
理由を聞こうと思ったら、先にヒョードルが口を挟んできた。
「ここはロシア正教会の出先機関みたいなものだから」
「出先機関?」
「ヴァンパイアスレイヤー」
セルゲイが言葉を継いだのだった。
僕はヴァンパイアコスプレ祭りで有名な辻沢の人間だし、さっきもヴァンパイアが焼尽する姿を見たばかりだ。
だから、平然とファンタジーなこと言われても、受け入れはするけども。
それから二人が話してくれたのは、正教会とロシアヴァンパイアの微妙な関係性だった。
もともと帝政ロシア時代までは敵同士だったが、ソ連時代、ゴルバチョフ・エリツィン時代、プーチン時代と、その関わり方を変えて来た。
敵だったり、味方だったり、つかず離れずやってきたのだという。
で、今はというと、連絡が取り合えるほどには近いが深くは干渉しないという間柄だったそうだ。
しかしである。
今回のまひるたちへの加担が発覚し、再び敵対関係に立ち戻ったというのだ。
「敵をおびき寄せて一網打尽にするはずが」
セルゲイが言った。
「何故か敵に露見していて、逆襲に会ったってわけ」
つまり、まひるはおとりだったわけだ。
すごく腹が立った。
自分たちの都合で大事な推しを危険な目にあわせるなんて。
「彼女のおかげで、この程度ですんだ」
感謝されても。
「なんで、こっちに加担しようとしたんですか?」
僕は疑問をぶつけてみた。
長い関係性を崩してまでそれをする理由が知りたかった。
「それがね、あいつらからの借金が嵩んでてね」
とヒョードルが言ったのに対し、セルゲイがあきれ顔をしつつ聞いている。
「本国からの送金は数年来なかったし」
「まあ、ヴァンパイアスレイヤーが仕事しないわけだから仕方が無いが」
セルゲイが合いの手を入れる。
ヒョードルが続けて、
「信徒がいるわけもないから献金でやっていくこともできない」
それをセルゲイが引き次いで、
「で、やつらに金を普請しつづけていたら、いつの間にか返せない額になっていた」
と言った。
そして再びヒョードルが、
「そんな時、とんでもなく美しい女性が訪ねてきて全部肩代わりするから、この後訪ねてくる人に味方しろって言ったらどうする?」
と説明したのだった。
さすがにセルゲイ達は躊躇したが、司祭がその女性をいたく気に入ったらしく、快諾してしまったそうだ。
それで司祭はなんでも上機嫌で請け負ってくれたのか。
「もしかして、セルゲイさんが僕に接触したのも」
「それはあの前に君のことを教えてくれた人がいたからだよ」
と言った。
「それもその女性ですか?」
「わからないな。僕の入植者ボランティアのブログにコメントで来たから」
いやいやと両手を前に振って、
「あの時は本当に君が心細そうにしてたから声を掛けたんだよ。その後さ、女性が訪ねてきたのは」
と言ったのだった。
たまたま心細げな男がいると連絡があって、ここに来るように誘導しておいたら、女性が訪ねて来て、その人間に味方しろと言っただと?
僕は、これまでのこと全部、誰かが仕組んだとしか思えなくなってきた。
教会の片付けも、あとは玄関扉と2階の窓の修繕を残すまでになった。
セルゲイが町のホームセンターに資材を買い出しに行くというので、ついでに頼み事をした。
それは、まひるたちアンセラフィムの着替えだ。
しかし、セルゲイはオーバーオールにハンチングを被る男だ。
世界的ゲードルにふさわしいものを選べるとは思えない。
それで僕が同行しようすると、まひるが絶対にだめだというのでお願いしたのだった。
「なんでもいいから、服なんて」
と、まひるはやさしいからそう言ってくれたが、推しに変な格好させるなんて耐えられない。
とにかく最高級に可愛いのをとセルゲイに念を押して、運を天にまかせたのだった。
普通は教会のようなところは信徒が沢山いて教会に何かあれば総動員で対応するものだ。
でも、この怪しいロシア正教会はいくら時間が経っても誰一人訪ねてくる様子はなかった。
「信徒さんはいないんですか?」
セルゲイに聞くと、
「司祭と3人でやってる」
理由を聞こうと思ったら、先にヒョードルが口を挟んできた。
「ここはロシア正教会の出先機関みたいなものだから」
「出先機関?」
「ヴァンパイアスレイヤー」
セルゲイが言葉を継いだのだった。
僕はヴァンパイアコスプレ祭りで有名な辻沢の人間だし、さっきもヴァンパイアが焼尽する姿を見たばかりだ。
だから、平然とファンタジーなこと言われても、受け入れはするけども。
それから二人が話してくれたのは、正教会とロシアヴァンパイアの微妙な関係性だった。
もともと帝政ロシア時代までは敵同士だったが、ソ連時代、ゴルバチョフ・エリツィン時代、プーチン時代と、その関わり方を変えて来た。
敵だったり、味方だったり、つかず離れずやってきたのだという。
で、今はというと、連絡が取り合えるほどには近いが深くは干渉しないという間柄だったそうだ。
しかしである。
今回のまひるたちへの加担が発覚し、再び敵対関係に立ち戻ったというのだ。
「敵をおびき寄せて一網打尽にするはずが」
セルゲイが言った。
「何故か敵に露見していて、逆襲に会ったってわけ」
つまり、まひるはおとりだったわけだ。
すごく腹が立った。
自分たちの都合で大事な推しを危険な目にあわせるなんて。
「彼女のおかげで、この程度ですんだ」
感謝されても。
「なんで、こっちに加担しようとしたんですか?」
僕は疑問をぶつけてみた。
長い関係性を崩してまでそれをする理由が知りたかった。
「それがね、あいつらからの借金が嵩んでてね」
とヒョードルが言ったのに対し、セルゲイがあきれ顔をしつつ聞いている。
「本国からの送金は数年来なかったし」
「まあ、ヴァンパイアスレイヤーが仕事しないわけだから仕方が無いが」
セルゲイが合いの手を入れる。
ヒョードルが続けて、
「信徒がいるわけもないから献金でやっていくこともできない」
それをセルゲイが引き次いで、
「で、やつらに金を普請しつづけていたら、いつの間にか返せない額になっていた」
と言った。
そして再びヒョードルが、
「そんな時、とんでもなく美しい女性が訪ねてきて全部肩代わりするから、この後訪ねてくる人に味方しろって言ったらどうする?」
と説明したのだった。
さすがにセルゲイ達は躊躇したが、司祭がその女性をいたく気に入ったらしく、快諾してしまったそうだ。
それで司祭はなんでも上機嫌で請け負ってくれたのか。
「もしかして、セルゲイさんが僕に接触したのも」
「それはあの前に君のことを教えてくれた人がいたからだよ」
と言った。
「それもその女性ですか?」
「わからないな。僕の入植者ボランティアのブログにコメントで来たから」
いやいやと両手を前に振って、
「あの時は本当に君が心細そうにしてたから声を掛けたんだよ。その後さ、女性が訪ねてきたのは」
と言ったのだった。
たまたま心細げな男がいると連絡があって、ここに来るように誘導しておいたら、女性が訪ねて来て、その人間に味方しろと言っただと?
僕は、これまでのこと全部、誰かが仕組んだとしか思えなくなってきた。
教会の片付けも、あとは玄関扉と2階の窓の修繕を残すまでになった。
セルゲイが町のホームセンターに資材を買い出しに行くというので、ついでに頼み事をした。
それは、まひるたちアンセラフィムの着替えだ。
しかし、セルゲイはオーバーオールにハンチングを被る男だ。
世界的ゲードルにふさわしいものを選べるとは思えない。
それで僕が同行しようすると、まひるが絶対にだめだというのでお願いしたのだった。
「なんでもいいから、服なんて」
と、まひるはやさしいからそう言ってくれたが、推しに変な格好させるなんて耐えられない。
とにかく最高級に可愛いのをとセルゲイに念を押して、運を天にまかせたのだった。