キノッピ 24
文字数 2,048文字
僕の上に腹ばいになったアヤネちゃんが、窓の外の音に反応して上下左右にズリズリと匍匐するものだから、僕の上半身は女体祭り!
って喜んでる場合ではないのだった。
台所の裏窓が割れる音がした。
そこからねじ込まれようとしている顔はパンパンに膨れ、金色の目、口のから血アワを吹き、銀牙が皮膚を破って突出ていた。
あの顔、どこかで見たことがある。
非合法リアルサバゲー「スレイヤー・R」の最恐エネミー、蛭人間だ。
辻沢をフィールドに秘密裏に行われ、毎回死人が出るクソやばゲー。
僕も一度だけコージと参加したが、あいつに追われて死ぬ思いをした。
蛭人間には二種類いて、男が改・ドラキュラで女がカーミュラ・亜種。
どちらもセーラー服を着ているが、改・ドラキュラはイガグリ頭。
あれは三つ編みに赤いリボンだからカーミュラ・亜種。
って冷静に分析している場合ではない。今度は6畳の窓ガラスが砕け散った。
割れた窓から蛭人間が押し入ってくる。
アヤネちゃんを守らなきゃ。
僕は立ち上がろうとしたけれど、金縛りが解けていずまったく動けなかった。
逆にアヤネちゃんがゆっくりと立ち上った。
そして6畳の襖まで迫ったカーミュラ・亜種に肉薄すると、掌底の一撃を食らわしのけぞらせ、喉に手刀をぶち込んだ。
カーミュラ・亜種の喉から吹き上がる血汚泥で部屋が血生臭くなる。
さらに奥の蛭人間に迫って側頭に蹴りを入れると、首が面白いように宙に舞った。
強い。
RIBでは格闘ゲームを主戦場にしていたアヤネちゃん。
その戦闘力はまひるを上回ると言われていた。
とにかく見切りが早い。
相手の初動に飛び込み、鼻、喉、みぞおちに連打を加え、肘打ち、膝蹴りからの手刀による首への打撃。
手加減すれば気絶で済むが、今のアヤネちゃんにその気は無さそう。
蛭人間の首が畳の上にごろごろ転がってゆく。
首をもがれた蛭人間はその場で青い炎をあげて燃え尽き消えてなくなる。
その後かすかな山椒の香りが立つのは、こいつらが辻沢産である証だ。
玄関が破られる音。そこからわらわらと入ってきたのはセーラー服のメタボ親父たち。
改・ドラキュラの一団だった。
アヤネちゃんは6畳から振り向きもせずに玄関先に飛ぶ。
勢いのまま太ももで蛭人間の首を挟んで体を回転させながらそれをねじ切ると、
後続の二匹の改・ドラキュラの後ろ首を両脇に抱えて立ち、力任せにへし折った。
首を折られた改・ドラキュラが炎上し始めたのを見て、
アヤネちゃんは台所に飛びし去ると、壁にかかった出刃と刺身包丁を手にした。
次いで裏のドアを破って侵入してきたカーミラ・亜種の喉笛を刺身包丁ではねて行く。
どうやらそこが蛭人間の弱点のようだ。喉をやると足が止まり直ぐに炎上を始めた。
アヤネちゃんは2本の包丁を器用に使い、畳かかって襲いくるカーミラ・亜種の喉を切り裂いて次々に料理していった。
それまでひたすら侵入してきた蛭人間の勢いが止まる。
アヤネちゃんが血みどろの包丁を投げ捨て、僕が寝ている所に戻って来た。
アヤネちゃんが跪き、僕の頬を冷たい手で触れた。
そして目蓋ににその手を添えると、僕の目を閉じさせた。
やがて喉元で、
「カハ!」
という音がしたかと思うと、首筋にチクリと痛みがして、次いでこめかみが涼しくなった。
しかしそれは一瞬のことで、再び僕が目を開けたときは、アヤネちゃんは枕元の窓から出て行こうとしていたのだった。
「アヤネちゃん! どこへ?」
声が出せた。手足も動かせるようになっていた。
ガラスが破られサンだけになった窓に足を掛けたアヤネちゃんの動きが止まり、こちらを振り向いた。
青白い月の光が信じられないくらい美しく横顔を照らしていて、
その赤く染まった唇が、
「さようなら」
と動いたように見えた。
そしてアヤネちゃんの姿は消えてしまったのだった。
アヤネちゃんが去った後、蛭人間たちは家の中にじりじりと侵入してきた。
けれど、僕の布団を遠巻きに囲うだけで一向に近づいてこない。
誰が最初に手を付けるのか相談中かな。
なんてのんきに考えていたら裏口が騒がしくなった。
新手が現れたようだ。
部屋の中の蛭人間は無言ながら、ざわついているのが分かる。
やがて裏口あたりにいた蛭人間がわらわらと中に押し込まれて来た。
そして裏口までのスペースが開かれると、幾本かの懐中電灯の光が部屋の中を照らしだした。
その一つが僕の顔を照らす。
その不躾な光に手をかざしていると、
「木下。大丈夫か?」
コージの声だった。
「お前がヴァンパイアに攫われたって聞いて助けに来た」
最初から最後まで、ブーだった。
嘘に決まっている。
ここを襲撃する気で辻沢からわざわざ蛭人間を運んできたんだ。
あの10tトラックで。
その後僕は起こされて、コージの車で大家さんの家に連れてこられた。
そこにいたのは、何人かのオトナだった。
おそらく辻沢から来た人間だろう。
僕に根掘り葉掘りこれまでのことを聞いてきた。
特に夜野まひるの居所を。
そんなこと教えるわけないだろう。
僕を誰だと思っている?
僕はチブクロNo.41023キノッピなんだぞ!
って喜んでる場合ではないのだった。
台所の裏窓が割れる音がした。
そこからねじ込まれようとしている顔はパンパンに膨れ、金色の目、口のから血アワを吹き、銀牙が皮膚を破って突出ていた。
あの顔、どこかで見たことがある。
非合法リアルサバゲー「スレイヤー・R」の最恐エネミー、蛭人間だ。
辻沢をフィールドに秘密裏に行われ、毎回死人が出るクソやばゲー。
僕も一度だけコージと参加したが、あいつに追われて死ぬ思いをした。
蛭人間には二種類いて、男が改・ドラキュラで女がカーミュラ・亜種。
どちらもセーラー服を着ているが、改・ドラキュラはイガグリ頭。
あれは三つ編みに赤いリボンだからカーミュラ・亜種。
って冷静に分析している場合ではない。今度は6畳の窓ガラスが砕け散った。
割れた窓から蛭人間が押し入ってくる。
アヤネちゃんを守らなきゃ。
僕は立ち上がろうとしたけれど、金縛りが解けていずまったく動けなかった。
逆にアヤネちゃんがゆっくりと立ち上った。
そして6畳の襖まで迫ったカーミュラ・亜種に肉薄すると、掌底の一撃を食らわしのけぞらせ、喉に手刀をぶち込んだ。
カーミュラ・亜種の喉から吹き上がる血汚泥で部屋が血生臭くなる。
さらに奥の蛭人間に迫って側頭に蹴りを入れると、首が面白いように宙に舞った。
強い。
RIBでは格闘ゲームを主戦場にしていたアヤネちゃん。
その戦闘力はまひるを上回ると言われていた。
とにかく見切りが早い。
相手の初動に飛び込み、鼻、喉、みぞおちに連打を加え、肘打ち、膝蹴りからの手刀による首への打撃。
手加減すれば気絶で済むが、今のアヤネちゃんにその気は無さそう。
蛭人間の首が畳の上にごろごろ転がってゆく。
首をもがれた蛭人間はその場で青い炎をあげて燃え尽き消えてなくなる。
その後かすかな山椒の香りが立つのは、こいつらが辻沢産である証だ。
玄関が破られる音。そこからわらわらと入ってきたのはセーラー服のメタボ親父たち。
改・ドラキュラの一団だった。
アヤネちゃんは6畳から振り向きもせずに玄関先に飛ぶ。
勢いのまま太ももで蛭人間の首を挟んで体を回転させながらそれをねじ切ると、
後続の二匹の改・ドラキュラの後ろ首を両脇に抱えて立ち、力任せにへし折った。
首を折られた改・ドラキュラが炎上し始めたのを見て、
アヤネちゃんは台所に飛びし去ると、壁にかかった出刃と刺身包丁を手にした。
次いで裏のドアを破って侵入してきたカーミラ・亜種の喉笛を刺身包丁ではねて行く。
どうやらそこが蛭人間の弱点のようだ。喉をやると足が止まり直ぐに炎上を始めた。
アヤネちゃんは2本の包丁を器用に使い、畳かかって襲いくるカーミラ・亜種の喉を切り裂いて次々に料理していった。
それまでひたすら侵入してきた蛭人間の勢いが止まる。
アヤネちゃんが血みどろの包丁を投げ捨て、僕が寝ている所に戻って来た。
アヤネちゃんが跪き、僕の頬を冷たい手で触れた。
そして目蓋ににその手を添えると、僕の目を閉じさせた。
やがて喉元で、
「カハ!」
という音がしたかと思うと、首筋にチクリと痛みがして、次いでこめかみが涼しくなった。
しかしそれは一瞬のことで、再び僕が目を開けたときは、アヤネちゃんは枕元の窓から出て行こうとしていたのだった。
「アヤネちゃん! どこへ?」
声が出せた。手足も動かせるようになっていた。
ガラスが破られサンだけになった窓に足を掛けたアヤネちゃんの動きが止まり、こちらを振り向いた。
青白い月の光が信じられないくらい美しく横顔を照らしていて、
その赤く染まった唇が、
「さようなら」
と動いたように見えた。
そしてアヤネちゃんの姿は消えてしまったのだった。
アヤネちゃんが去った後、蛭人間たちは家の中にじりじりと侵入してきた。
けれど、僕の布団を遠巻きに囲うだけで一向に近づいてこない。
誰が最初に手を付けるのか相談中かな。
なんてのんきに考えていたら裏口が騒がしくなった。
新手が現れたようだ。
部屋の中の蛭人間は無言ながら、ざわついているのが分かる。
やがて裏口あたりにいた蛭人間がわらわらと中に押し込まれて来た。
そして裏口までのスペースが開かれると、幾本かの懐中電灯の光が部屋の中を照らしだした。
その一つが僕の顔を照らす。
その不躾な光に手をかざしていると、
「木下。大丈夫か?」
コージの声だった。
「お前がヴァンパイアに攫われたって聞いて助けに来た」
最初から最後まで、ブーだった。
嘘に決まっている。
ここを襲撃する気で辻沢からわざわざ蛭人間を運んできたんだ。
あの10tトラックで。
その後僕は起こされて、コージの車で大家さんの家に連れてこられた。
そこにいたのは、何人かのオトナだった。
おそらく辻沢から来た人間だろう。
僕に根掘り葉掘りこれまでのことを聞いてきた。
特に夜野まひるの居所を。
そんなこと教えるわけないだろう。
僕を誰だと思っている?
僕はチブクロNo.41023キノッピなんだぞ!