沢口の編10

文字数 367文字

 その毒物漬けの強面の男が入院していた大学病院には、いま人気絶頂のアイドル娘も入院していたらしいが、この病院に着いた後に知った。
 恵人の奴、言うのが遅いんだよ。本人は言いそびれました、と変に弁明していたが、仙人の館で成長したな、と思ったらまったく鈍感な奴だ。
 もっとも、口パクのアイドルたちのどこが良いのか? スタイルはKポップのアイドルたちに劣り、肝心の顔は並だし、俺にはちっとも理解できないが。
「あの、なにか関係があるのですか」
 沸騰していた頭の湯気が少し冷めてきたのか、隼人が初めて普通の口調で訊いてきた。
「ま、いずれわかるよ」
 返答すると耳に、廊下の遠くから複数の足音がパタパタと聞こえてきた。こういうとき、霊のアンテナというものは便利だ。
 足の主たちがこの部屋を目指している、ということをすぐに察知した 。

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