恵人の編3

文字数 390文字

「沢口さん、恵吾の、恵吾のところに行ったら駄目ですか?」
 恵人は、恵吾に何ごともないか心配だった。あれから、ずっと気になっていた。恵吾の様子を見に行きたくて仕方がなかった。
 今頃、どうしているだろうか? ちゃんと食事はしているだろうか?
 いじめに耐えてくれているだろうか?  
 恵吾のことが、頭からずっと離れなかった。
 心がざわついて、胸が詰りそうだった。今すぐにでもここから飛び出して、恵吾の様子を見に行きたかった。
「もうしばらく待て、いまはこの家の生活に慣れるのだ。弟の様子は俺が見てくる。わかったな」
「はい」
 恵人は口にしたが、心はざわつくばかりで、素直に従う気には慣れなかった。が不満はあっても従うしかない。ここで仙人との誓いを破ることはできない。
 それに、こうして現世に戻ることができたのは、沢口のおかげだ。
 恵吾に会いたい気持ちを、ぐっと堪えた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み