沢口の編2

文字数 424文字

「俺か? 俺はあの子のつれだ」
「だったら、その子に言ってくれ! 僕の体に入り込むなって」
 また唾混じりの声を飛ばしてきた。
「あの子が、君の体に入らないと、君の体は、近いうちに焼かれて灰になってしまうぞ」
「あいつが入れるんだったら、この僕だって、生き返れるっ」
 顔を真っ赤にして、今度は唾混じりが倍増した声を飛ばしてきた。そのひどく怒った表情は、いまにも恵人に殴りかかりそうな形相だ。
「いや、残念ながら君は、あの体にはもう戻れない。ある特殊な霊力が備わっていないと、生き返れないんだよ」
 怒声を飛ばし、怒り心頭という顔で恵人を睨みつけている青年を、沢口は落ち着かせようと、柔らかい口調で説明した。
「そんなの嘘だ!」
 怒鳴るように、青年がまた唾を飛ばさんばかりにして声を返してきた。
「なんなら試してみるかい。戻れるかどうか。恵人、その体から離れろ」
 恵人が頷いて体から抜け出ると、青年は入れ替わるように勢いよく体内に飛び込んだ。
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