恵人の編6

文字数 335文字

 彼女たちのスカートを、捲らせるわけにはいかない。
 マンゴー狩りの紹介はやめて、体を貸してくれている御礼は、別の方法ですることにした。
「何を学んでいるのか、まったくわからないまま授業を受けるのは苦痛です。沢口さん、本屋に行ってもかまいませんか?」
「ああ、かまわないよ。俺も読んでみたいのもあるし」
「沢口さん、霊がいまさら本を読んでどうするんですか?」
 口の中を確かめそうな顔をしていた隼人が目を丸くして、沢口の顔を覗いた。
「まあ、行ってみればわかるさ。俺も霊になって、本屋に行ったことないからな」
「いやだから、霊が本を読む意味が」
 沢口と恵人はその声を無視して部屋を出た。
 その後を隼人が、納得できないという顔をずっとぶら下げたまま後を追っていた。

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