沢口の編3

文字数 520文字

 頭から温泉の湯気でも沸騰しそうな怒り顔で、宙に浮いている大学生の隼人よりも、老けて、いや大人びていた。が、だからと言って、いわゆる助平心でノレンを見ていたのではないのは、確かだ。と、思う。
 その眼が語っていたのは、慕っていた、かけがえのない大切な姉を性奴隷にしたあげく、卑劣な惨い手口で殺した、AVメーカーを調べるためだ。
「まあまあ、性の目覚めの早いか遅いかは、人それぞれだからな。隼人もエロ画像とか、動画とか、一杯隠しているんだろう?」
  沢口は二人の間に割って入り、隼人の眼を覗いた。
「な、なに言っているんですか! 僕は、そ、そんなの持っていませんよ」
 隼人が上ずった声で返答した。が、何かを心配しているような、少し泳いだ眼を付け動揺していた。
「おい恵人、いいかあ、僕のパソコンのフォルダを勝手にいじくりまわすな。わかったな」
 隼人が眼を真剣な色に変えて、命令口調で指示してきた。
「え? パソコンのフォルダを、ですか?」
「ああそうだっ、パソコンのフォルダを勝手に開くな。わかったなっ」
「ほう~。なに、そこに、スゲーお宝でも入っているのか?」
 沢口はニヤニヤしながら、強く念を押す隼人をからかうように小突いた。

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