恵人の編15

文字数 361文字

「止める方法? うんん~」
 仙人の眼の色が変わった。それから腰に組んでいた両手を解いて、右手を顎に伸ばすと、何かを考えているかのように髭を撫でていた。そして考えがまとまったのか、沢口の顔に目をやった。
「沢口、ちょっと来なさい。君は、そこにいるんだ」
 強い口調で指示すると、仙人は返事も聞かずに宮殿の正門に向かってすっと歩き出した。その姿を眼にした沢口は、何だろうとでも思ったのか、少し首をかしげるような仕草をしていたが、従者のように仙人の後に続いた。
 恵人は、目の前から遠ざかる二人の背中を眼で追いながら、願いを叶えてくれることをひたすら祈った。
 期待と不安が交錯した。
 だが二人が宮殿内に消えていくと、仙人の厳しい言葉を思い出し、期待よりも不安だけが増幅した。
 それを払拭しようと、周りの景色に目をやった。
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