恵人の編3

文字数 387文字

 仙人が住んでいる雲の地は絶景だった。地球の全ての色で着飾ったような周りの風景は、いままで自分が眼にして美しいと感じた景色とは比較にならないほど美しかった。
 確かに雲海の中にいるはずなのだが、紅葉満開の秀麗な山々に囲まれた美しい湖畔の芝生に、3人とも浮いているのではなく、色鮮やかな花柄模様の絨毯のような芝生の上に立っていた。
 そしてその先には、美しい花々に包まれて漆色と金色に輝く絢爛豪華な竜宮城のような大きな宮殿が、周りの風景を従える主のように建っていた。
 天国から落ちてきた、と言っていた仙人も霊のはずだ。その霊が、いかにも仙人が住むような山小屋ではなく、仙人に似合わない、こんな立派な宮殿を構えているとは。
 この仙人は、霊であって霊ではない、別の 存在のように、恵人には思えた。
「駄目ですか?」
 沢口の声が、景色に眼を奪われていた恵人の耳に届いた。


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