第55話 沢口の編8

文字数 409文字

「まあまあ、おまえたち、どこか似ているぞ。前世で二人は兄弟か、それとも相思相愛の夫婦だったんじゃないか?」
 沢口は苦笑いを浮かべながら、また2人の間に割って入った。
「なに言っているんですか? 沢口さん。こいつと僕は」
「まあ冗談だよ。それより安室。君はこの子に感謝しないといけないぞ。この子が君の 体に入り込めないと、君の体は近いうち、この世と、おさらばだ。ちっぽけな骨のかけらと、灰だけになってしまうのだぞ。感謝しないとな。ところで君は、歳はいくつだ?」
 また怒りが沸騰しそうな顔をして、言い返してきた隼人に、沢口は担当医にでもなったつもりで訊き返すと、本物の担当医たちの会話を思い出した。
 隼人の生命維持装置は、酒池肉林のあげくに体を壊し当病院に入院している防衛大臣の御曹司の臓器移植の手術日に合わせて来週外す予定になっていた。
 そして他の内臓も全部切り取られて、別の病院で再利用されるということを。

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