恵人の編10

文字数 333文字

「そうすると恵人は、別人になって生きていく。そういうことですか?」
 沢口が興奮したままの顔で、直ぐに本題に戻した。
「まあそういうことだ。この子は別人になって生きていくことになる。肉体は他人のものだからな。肉体の元の主のように振る舞い、生きていくということだ。自分の名前ではなく、脳死した人間の名前を名乗って生きていくことになる。場合によっては、老人ということもありうる」
 恵人は、子供から いきなり老人になった自分の姿を思い浮かべた。
 いつかテレビで見た衝撃の映像を思い出した。老人の体を持つ子供。いや自分は本当の老人の体を持つ子供になるかも。
 頭を振って嫌な想像を打ち消した。
「だが、乗り移る人間次第では……」
 仙人が一呼吸置いて、言葉を続けた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み