沢口の編17

文字数 400文字


 いや、恵人に、そうはさせない。そうならない方法を、沢口は考えていた。179日を迎える前に緊急避難で入れ替わればいいと。
 外見は老木のように萎れた青年でも、心は若い中年になってしまうが。それを繰り返し続けていけば、恵人は霊として、存在できるはずだ。恵人は俺が守る。
 そう腹を決めていた。
「なぜです? なぜ、そうなることを承知で、僕の体に入ったのですか?」
「ま、急ぐな。それは後でゆっくり説明する。それより、さあ家に帰るぞ」
 沢口は明るい顔に切り替えて、言葉を繕った。
「自分の家みたいに言わないでくださいよ。僕の家なんですからね」
 隼人が不満そうに声を返してきた。
 がその刺々しさが消えている話しぶりと、分厚い黒雲に覆われた雨空のような暗い表情から、日差しが差してきたような顔になっている姿を眼にして、沢口は安堵した。
 どうやら隼人の精神状態は、普段の姿に戻りつつあるようだった。
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