恵人の編13

文字数 383文字

「そうか、両親と姉さんが……それで、弟だけは、生きていてほしいというわけか」
 仙人の顔が曇った。が直ぐに、心を読み取るかのように、また鋭い眼を向けてきた。
「お願いします。僕の霊力を、生き返れる霊力を引き出してください。お願いします」
 恵人は、仙人の前に両膝を落して手をつき、必死に訴えた。 
「駄目だ。リスクがあまりにも大きすぎる。おまえの心は未熟だ。そんなおまえに、人類の存続を脅かしかねない霊力を与えるわけにはいかない」
 手厳しい声で、仙人は願いを一蹴した。
「お、お願いです。お願いです、お願いです。弟を助けてください。お願いします。僕に、力を与えてください。決して、決して、悪魔の仲間になんか、絶対になりませんから。弟を守らせてください。お願いします。お願いします」
 願いを突っぱねた仙人の厳しい声に、凍りついた恵人は声を震わせ、必死に哀願した。
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