恵人の編4

文字数 358文字

「いや、駄目ではない」
 何かを思案しているかのような目を付けたまま、サンラー仙人が重厚な声で応じた。
「それじゃ、この子の霊力を引き出すことができるのですね?」
 沢口が驚いたままの顔で、訊き返した。
「ああ出来る。だがこの子の霊力は強力だ。使い方を誤ればもろ刃の剣になりかねない。この子は……天国への道を失い、下手をすれば、地獄で焼かれる恐れもある」
「え? どういうことです?」
「この子は、現世に、つまり生きていた世界に、戻れる潜在霊力があるのだ」
 仙人が、にわかに信じがたいことを喋った。
「そんなことが、できるのですか?」
 沢口がひどく驚いた声を張り上げた。
――僕が、この僕が、また生き返れる?
 恵人は、自分の耳を疑った。潜在能力に代わって、霊界には潜在霊力なんてのがあるのかよ? ほんとかよ?
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