恵人の編5

文字数 427文字

「あの、隼人さん、ここに中学、高校の教科書とか、置いていませんか?」
「中学、高校の教科書? そんなのとっくに捨てたよ。ははん、そういうことか。大学の試験だったら何も心配するな。僕が傍にいて全部教えてやるよ。それより、マンゴーまだ口の中に残っていないか?」
「え? いえ、あ、ありがとうございます。でもできる限り自分で勉強したいです」
 恵人は、マンゴーの余韻が残っている歯間を舌で急いで掃除して生唾を飲み込み、口内を洗浄して返答した。
 それから、また口に手を突っ込みそうなマンゴー狂の顔を見ていて、ふと思った。
 あの仙人のマンゴー園に、隼人を連れて行ったら、いったいどうなるだろうか?
 その光景を見てみたい変な好奇心が、急に湧いてきた。霊には現生のマンゴーは食べることはできないが、霊界のマンゴーなら思う存分に食べることができる。
 大事な体を提供してくれた、せめてもの御礼にと、いつか隼人を仙人の宮殿の果樹園に連れて行ってみたくなった。  

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