4節(13)

文字数 1,493文字

 銃声と共に発射された弾丸は、狙い違わずディーンの乗った大タル爆弾Gに直撃し、その衝撃を引金(トリガー)として爆発する。


 ドドドドオォォォンッッッ!!!!


 周りの爆弾を誘爆させ、強大に膨れ上がった爆風が、盾越しにその上に乗っていたディーンを、遥か上空へと巻き上げた。

 そしてその高さは、先に上空へと上がり、更にゆっくりと上昇していくリオレウスを、眼下に見るまでに到達する。

 翼持つ空の王者を真下に見下ろす位置、それはつまり、この後ディーンにおこる、自由落下の先を意味する。

「上を取ったぜ、空の王者ぁ!!

 それはまさに、(すべ)てに置いての勝利宣言であった。

 高らかに声を上げるディーンは、右手の折れた鉄刀を頭上へ放り投げるや、背中の(さや)を引き抜くと、大上段に構えて自由落下に身を任せた。

延髄(えんずい)叩き割って、意識ごと地に沈めてやるぜ! 王様野郎!!

 落ちてくるディーンに対し、下に位置するリオレウスは為す術もない。

 さもありなん。彼の竜が、空中戦において、自らの頭上を許すことなど有り得ない。


 ──あってはならないのだ。


 上空から降り注ぐ者は、やはり死の化身に相違なかったのだ。

 空洞内で充分なスペースがないこの場所では、方向転換も、頭上を仰ぎ見ることすらできず、リオレウスは落ちてくるディーンをただ待つしかない。


我流一刀(がりゅういっとう)……」


 そして、死神の鎌が今、振り下ろされた。


断罪の鋼刃(イグゼキュート)!!


 鋭い声と共に、大上段から渾身の力で振り下ろされたディーンの鉄刀の鞘が、火竜の後頭部、人間で言うところの延髄(えんずい)に炸裂する。

 (あお)い瞳のディーンが、文字通り全力をもって振り抜いた一撃である。

 その直撃を受けたリオレウスは、一撃の威力に押し込まれるように急降下し、まるでディーンの鞘で首から地面に叩きつけられるかのごとく、墜落した。


 ズウゥゥゥンッッッ!!


 それ(さま)はまるで、ディーン自身が断頭台(ギロチン)の刃と化したかの如き一撃であった。

 まさに斬首(ざんしゅ)
 断罪の鋼刃(イグゼキュート)

 上空からリオレウスを地面に叩きつけた当のディーンは、その衝撃をうまいこと相殺(そうさい)し、自身は器用にリオレウスからやや離れた場所に着地した。

 その左手には、今の一撃に耐えきれず、真っ先に壊れてしまったのであろう、鉄刀の鞘。

 今の一撃によって、頸椎(けいつい)ごと首の骨を粉砕されたリオレウスは、二、三度痙攣(けいれん)した後、もう二度と動く事はなかった。

 ディーンが空いた右手を天高く掲げ上げる。

 そこに、まるで吸い込まれるかのように、先に空中で放り上げた鉄刀の半身が収まった。

 あまりの事に、しばし呆然としていたエレンであったが、この戦いに勝利することができたという実感が、じわりとわいてくる。

 それは、他の面々も同じなようで、それぞれの顔に歓喜の色が浮かんできた。

 本来なら、このまま皆で抱き合って喜び、大いに笑い合うところであったのだろう。

 ディーンが落ちてきた鉄刀をキャッチした姿勢のまま、盛大にぶっ倒れなければ……

「きゃ~っ!! ディーンさ~ん!?

 エレンの悲鳴が空洞内に響き渡り、慌てて皆がディーンの元へと駆けていったのは、言うまでもないことであった……









To be Continued...…
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